冷凍食品に対する消費者の人気が高まっている。価格面やおいしさに魅力を感じる人が増え、子どものお弁当の材料のみならず、最近は家事や育児に参加する父親の間でも重宝されているようだ。
食品の冷凍保存そのものは、近年始まったことではない。しかし、おいしさを保つための急速冷凍やメニューの多様化、さらには冷凍食品に適した素材の開発といった技術的な革新は、年々進んでいるようだ。
生きた細胞を素早く凍らせる
日本冷凍食品協会が2010年5月に発表した、25歳以上の既婚女性500人を対象とした調査結果によると、冷凍食品の魅力として「おいしい」「メニューの種類が豊富」「価格」をあげた人が前年より大幅に高まった。特においしさの点は最も伸び率が高かった。その理由が、10月18日に開かれた同協会主催の「冷凍食品の日」イベントで明かされた。
同協会の浦野光人会長によると、おいしさや栄養価を保つ「秘訣」は、食品を急速冷凍して食材の細胞を壊さないことにあるという。野菜も「畑から収穫してすぐに冷凍処理すれば、生のまま流通している野菜に比べてビタミンをそのまま残せる」。また浦野会長は、「マイナス18度」という低温で保存することにより、日持ちさせるため冷凍以外に特別なことが必要ない点を強調。細菌が繁殖せずに衛生的で、品質も1年間保持できるそうだ。
これらを可能にするのが、「生きた細胞を素早く凍らせる」(浦野会長)急速冷凍の技術だ。例えば、肉や魚に含まれるたんぱく質の細胞に含まれる水分を瞬時に凍結させることで、細胞を壊さずに栄養も保たれるという。逆にゆっくり凍らせた場合は、水分が膨らんで細胞を壊す原因になるようだ。家庭用の冷凍庫では、急速な凍結は困難だと浦野会長は言う。
冷凍食品に適した小麦粉を開発
イベントで浦野会長らとのトークショーに参加した俳優の杉浦太陽さんは、お気に入りの冷凍食品に「断然うどんです。強いコシ、歯ごたえが好き」と即答した。実はこのうどんの冷凍法にも、一つの技術が見られる。
同協会の木村均専務理事によると、「コシ」の秘密はめんの中心部と周りの水分含有量の違いにあるという。その「違い」をそのまま冷凍する技術を開発。解凍しても、歯ごたえのあるうどんが味わえるようにした。さらにうどんでは、「冷凍食品に適した小麦粉を開発している」と木村氏。うどんに限らず、米や油など「冷凍食品用」につくられた食材はさまざまだと話す。
技術の進歩とともに、メニューも多様化。ほうれん草やアスパラガス、さといもといった野菜類も冷凍食品で販売されている。浦野会長は、「すべての野菜や果物が冷凍食品にできるのが夢」と語った。
イベントでは技術面以外にも、安全管理面について触れられた。協会が「冷凍食品認定制度」を設けて、海外で製造する場合も、製造工程や社員教育といった面で厳しい基準を課していると強調。そのうえで、制度をパスした製品にのみ「認定証」マークを与えているという。
調理が簡単なだけでなく、栄養面や味も技術的に裏打ちされているとなれば、「料理は苦手」という「お父さん」には強い味方になるかもしれない。