NHK の試算によると、2011年夏の完全地デジ化で、NHKの受信料収入が最大で1割、額にして666億円も減る、と通信社が報じた。アナログ世帯が大幅に残る可能性があるためで、NHKは、思い切ったスリム化も迫られそうだ。
「総務省と結託して、強引に地デジ化を進めたつけが来ています。アナログ世帯が残るのは、分かり切った話ですよ」
アナログ世帯が大幅に残る可能性
元NHK政治部記者の川崎泰資さんは、あきれた様子でこう明かす。
2011年7月24日の完全地デジ化で、アナログ放送は見られなくなる。しかし、共同通信が報じたところによると、アナログ世帯は大幅に残る可能性があるため、11年度は、受信料収入が前年度の1~10%程度、額にして91~666億円ほども減るというのだ。デジタルテレビを買っても、UHFアンテナがなかったり、電波が届かなかったりするケースもあることが、それに拍車をかけている。
受信契約数では、10年度末時点で3722万件となっているが、これから62~448万件も減る試算だという。
もし受信料収入が1割も減れば、NHKはどう対応するのか。
共同によると、同局は11年度予算では、前年度3月末で1260億円もある繰越金などで対処することを考えている。NHKの子会社にも多額の剰余金があることが判明しており、財務上の余力は十分あるようだ。
これに対し、ネット上では、批判も高まっている。
2ちゃんねるでは、繰越金は国民に返し、平均年収1000万円以上とされるNHK職員の高給を削減したり、人員や子会社を整理したりして減収をカバーすべきだとの主張がみられる。デジタルテレビにするなら、民間衛星放送のように画面にスクランブルをかけて、見たくない人はお金を払わなくてもいいようにするべきとの声も多い。
「職員の給料も、いずれ切らざるをえなくなる」
NHKは、不祥事多発が批判されたことをきっかけに、2012年度の受信料収入の10%を視聴者に還元する方針を決めている。完全地デジ化で受信料収入が減れば、それに影響が出ることが懸念され、2ちゃんなどでは、NHKの試算結果が10%還元をしない口実に使われるのでは、といぶかる声も出ている。
NHKの広報部では、試算は内部調査だとして具体的な内容は明らかにせず、取材に対し、「減収につながるリスクの可能性は認識していますが、そうならないよう全力で取り組んでいます」とだけコメントした。10%還元ができるかどうかについては、減収を前提にした質問には答えられないとし、2012年度からの経営計画の議論の中で検討していく考えを示した。
元NHK政治部の川崎泰資さんは、同局の地デジ化対応について、こう指摘する。
「減収で10%還元できないというのは、もはや通りませんよ。世の中には現状維持できない企業もいっぱいあるのですから、職員の給料も、いずれ切らざるをえなくなるでしょう。人員も多く、NHKは抜本的な改革をしなければいけません。それも生え抜きの会長ではなく、外部から呼ばないとできないです。今でも相撲中継に、1場所5億円も出しているのも、信じられません。受信料は、伏魔殿の世界で、本当のことはだれも知らされていないのです。無駄遣いはたくさんあり、まずそれを何とかする必要がありますね」