朝食にスープとパンを摂る人が増えている。「エキナカ」などにはスープ専門店が続々お目見えしているほか、お湯を注ぐだけの粉末スープの売れ行きも好調だ。
食べるスープの専門店では、栄養のバランスを考えたパンとのセットメニューを用意。スープ専門店の「チャウダーズ」によると、2010年度の売上げ(4-9月末)は前年度と比べて11.5%増という。さらに、10月28日からは通信販売もスタート。「スープを食べる生活」が日常になるよう広めていく。
気軽に入れるスープ専門店、駅周辺に急増中
ネット調査のマクロミルの「朝ごはんの実態調査 2008」によると、朝食を摂っている人でも、時間をかけないで簡単に朝食をすませていることがわかった。朝食で重視するポイントとして7割の人が「簡単に食べられること」をあげ、5割の人が朝食にかける時間は「5分以上15分未満」と答えた。
そうした中で、簡単に摂れる朝食としてスープが注目されている。朝の忙しいときでもお湯を注ぐだけで簡単に飲める粉末やカップ、レトルトタイプのスープは好調で、定番のコーンから、かぼちゃやきのこのポタージュスープ、わかめスープに中華スープなど多くの種類が登場している。
市場調査の富士経済によると、2009年のスープ市場の規模は前年比2.7%増の1576億円となった。景気低迷による内食化や節約志向を背景に、堅調に推移している。
通勤途中などに、スープ専門店を利用する人も増えている。汐留や大手町、JR品川駅や大宮駅のエキナカにも出店するチャウダーズは、6~8種類のスープを1週間ごとに変えて用意。メニューは店舗限定のものを含めると42種類もあって、お客を飽きさせない。なかでも、売上げの7割はパンとのセットメニューだ。立地のよさもあって、働く女性を中心に来店者は増えている。
チャウダーズは、「毎夏、暑くなるとスープの売上げは伸びにくくなるのですが、今年の猛暑による影響で食欲がわかないときでも、手軽に栄養が摂れるため、冷たいスープとともに温かいスープがよく出ました。それが売上げの増加につながっているのだと思います」と話している。
スープで朝食「ダイエット」にもおススメ
朝食にスープを摂ることのメリットを、学術博士(食物学)で栄養士の佐藤秀美先生は「朝は消化器官の働きが十分ではありません。スープであれば、のど越しがよくスッと食べられて、胃に負担をかけません。朝は栄養素が不足している状態なので脳やからだの働きを刺激するためにも、とてもいいです」といって勧める。
一般的に、健康のためには1日350グラム以上の野菜を摂ることがよいとされているが、2008年度の国民健康栄養調査では、日本人の1日平均の野菜摂取量は295.3グラムと300グラムに及ばない。佐藤先生によれば、「この不足分は、朝食で野菜を食べなかったり、朝食そのものを抜いていると考えられます。まず朝食を摂ることですが、それが野菜入りのスープであれば1日分の野菜必要量である350グラムをらくにクリアでき、食物繊維や水溶性ビタミンなどを補えます」と、栄養バランスのよさも強調する。
スープとパンの相性も抜群で、その食べ方もいろいろ。最近では「クノール カップスープ」の味の素が、スープにパンを浸して食べる「ひたパン」派と、つけて食べる「つけパン」派に分かれて、どちらが支持されているかWEB投票で決めようという、テレビCMが話題になっている。
佐藤先生はスープとパンの相性のよさについて、「パンをスープにつけたり、浸したりすることで、パンに含まれている塩分が溶け出てスープの旨みが増す効果があります。たとえばスープによく合うとされるフランスパンは、塩分が多めです」と説明。さらに、パンにつけるバターやジャムが必要なくなり、「ダイエット食としてもおススメです」と話す。