モチモチ餃子は特製ポン酢で食べる
その中の一つ、渋谷の「あくとり代官 鍋之進」の料理長・元茂悟さんも、周囲のようすからブームを予感した一人だ。春先から餃子鍋の構想を練りはじめ、商品化まで数えきれないほどの試作品をつくってきた。
たどり着いた水炊き鍋は、スープにこだわり、鹿児島県産の知覧鶏からとったダシは「濃厚で、これだけでもイケます」と話す自信作だ。餃子はモチモチ感のある、しっかりした歯ごたえで、皮はジャガイモと白玉粉、片栗粉を練り上げた、特製のジャガ餅を使用。鍋に入れても粘りがあるので崩れない。1日平均100個をつくる。
シンプルなスープに合うよう、特製ポン酢を用意。元茂さんは「スープにちょうどいいように、ご家庭よりも濃いめにしています」と秘伝のポン酢について語る。
ミツカンが行った「鍋に関するアンケート」(2010年、複数回答)によると、水炊きの魅力は「付けダレの味を変えることで、複数の味が楽しめる」(64.1%)、「付けダレの味を変えることで、家族全員の好みに合わせることができる」(40.8%)、「好みのタレで飽きずに食べられる」(35.9%)と、食べる人の好みで味わえる点が評価されている。
その一方で、これまでのカレー鍋やトマト鍋のブームの背景には、鍋専門店の味が家庭に広がったことがある。餃子鍋もその可能性を秘めていて、「ぬくぬく家」の牛島店長は「ご家庭では水炊き鍋に、厚めの皮を使った餃子を入れてポン酢などの付けダレで食べるのが手軽でいいと思います」と勧める。
スープがシンプルなので、ポン酢でさっぱりと食べたり、さらに「食べるラー油」を入れてピリッと辛口で食べるのも、お好みしだい。薬味を入れても味が変わる。さまざまな味に餃子がマッチして楽しめるのも餃子鍋が受け入れられつつある理由のようだ。