1ドルで売られていたニューズウィーク 今度はネットニュースと合併の噂

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   赤字に苦しんでいた米ニューズウィーク誌(NW)が、わずか1ドルで経営権を譲渡されたことが分かった。新しい経営者は大物ビジネスマンだが、メディア業での手腕は未知数だ。

   新体制で揺れるNWには、新たに新興のニュースサイトとの「合併話」が持ち上がってきた。各メディアが騒ぎ立てるなか、該当者は口を閉ざしている。

巨額の負債も同時に引き継ぐ?

有名誌もとうとう売却の憂き目に
有名誌もとうとう売却の憂き目に

   1933年創刊のNW誌は、米国でも指折りの週刊誌だ。1961年からは、ワシントンポスト紙の親会社、ワシントンポスト社の傘下に入った。同社がNWを売却することが明らかになったのは、2010年8月2日。新オーナーは、音響機器メーカー創業者、シドニー・ハーマン氏だ。

   話題になったのは買収額。NWの出した発表資料には「低額の現金」としか書かれていないが、米メディアでは「1ドルではないか」と推測していた。実際、ワシントンポスト社が米証券取引委員会に開示した情報によると、売却金額は1ドルとなっていた。驚きの値段には、事情がある。

   2009年、NWは購読料の落ち込みと広告収入の不振から、3000万ドル(約24億円)の赤字を計上した。巨額の負債をハーマン氏が受け入れると言われ、そうなれば決して安い買い物ではない。

   しかもNWは、2007年以降は売上高が大きく減少し、赤字を計上。経営の足を引っ張っていた。2010年5月、ワシントンポスト社はNWの売却を決断したことを発表し、買い手を探していたところにハーマン氏が名乗り出た。NWを「国家の宝」と呼ぶハーマン氏だが、2009年の売上高も前年比27%減となった雑誌の立て直しは容易でない。

合併でハフィントン・ポストに対抗?

   9月30日付けで、NWは新たな経営陣を迎えたが、変革の波は編集態勢にも押し寄せそうだ。複数の米メディアは、同誌が新興オンラインニュースメディア「デイリービースト」(DB)と合併するのでは、と伝えているのだ。

   DBは2008年10月に、ティナ・ブラウン氏が立ち上げた。ヴァニティ・フェア誌やニューヨーカー誌に携わった女性敏腕編集者で、DBでは編集長も務める。NW売却後しばらくして、「ブラウン氏がNWに興味を示している」との噂が立ち、9月にはニューヨーク・オブザーバー紙の記者が、ブラウン氏が出席した出版記念パーティーで直撃取材を試みているが、「NWなんて、別に関心ないわ」と一蹴されていた。

   ところが10月に入ると、米ウォールストリートジャーナル紙などが「合併話は進行中」と報道。英ガーディアン紙は、ブラウン氏が、米ネットニュース「ハフィントンポスト」の創業者、アリアナ・ハフィントン氏に対抗しようと合併を考えているとの記事を掲載した。その直後にブラウン氏は、ライバルと書かれたハフィントン氏と面会し、会話内容をDBに再現してみせた。2人の軽快なトークの中にも、ガーディアンの記事内容を茶化しつつ、核心には触れないようにしている。

   実はDBでは、NW売却の発表の翌日に記事を掲載。ワシントンポスト社の「売却に関する覚書」を入手したとして、「米国内、海外、デジタルの主要事業で2008、2009年と連続で赤字」「2010年も2000万ドルの営業損失を予測」などと「暴露」した。そのうえで、ハーマン氏の買収を「心温まるストーリーだ」としつつも、「NW復活の手立てを持ち合わせていない」と断じている。

   これだけこき下ろしておいてその後合併話が出てきたことを考えると、この記事は「煙幕」だったのか。DBも、またツイッターにしばしば投稿しているブラウン氏も、沈黙を守ったままだ。

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