背景には特許がからむ「2010年問題」
大手のワクチン参入の背景には「2010年問題」もある。各社の主力医薬品の特許が、2010年前後に一斉に切れるのだ。特許制度に保護される医薬品は、特許が認められると、約20年間、他社が同じ成分の薬を製造・販売できないが、特許が切れると、安価な後発医薬品を販売できる。世界的に新薬審査が厳格化し、各社の新薬開発が進んでいないこともあり、影響は深刻だ。
その点、ワクチンは「新薬開発が進まない製薬大手には、需要拡大が見込めるので、魅力的な分野。今後も国内製薬会社の参入は加速する」(業界筋)とみられている。
ただ、世界のワクチン市場は、英グラクソ・スミスクラインやスイスのノバルティスファーマなど欧米企業が「圧倒的なシェアを占めている」(国内大手)。国内企業が量産体制を整え、ワクチンを収益源にするのは容易ではない。国内で技術を確立した上で、先行する欧米大手に対抗できる量産体制をいかに整えられるか、課題は大きい。
いずれにせよ、国民にとっては、毒性の強い鳥インフルエンザは遠からず世界的に大流行すると予想されるだけに、いざという時に備えてワクチンの国産体制が拡充されるのは有難いことだ。