「優秀でない学生に税金使うな」 大前研一コラムに賛否両論

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   大卒後3年以内を「新卒」扱いした企業に政府が助成金を出すことに、経済評論家の大前研一氏が噛みついている。日本は就職率が高いとして、20社も受けて内定が出ないような学生に税金を使うべきでないと言うのだ。

   「とんでもない政策」と、大前研一氏は斬って捨てる。

政府が大卒3年以内の雇用に助成金

波紋を呼んだコラム
波紋を呼んだコラム

   週刊ポスト2010年10月15日号の連載コラムで明かしたもので、怒りの対象は、政府が9月10日に閣議決定した経済対策だ。

   その中の「新卒者雇用に関する緊急対策」に、2つの支援策がある。企業への奨励金100万円支給と、試験雇用から正社員にするトライアル雇用の拡充だ。トライアル雇用では、試験雇用中の企業に月10万円を最長3か月支給し、正社員に雇えばさらに50万円を出すとしている。

   大前氏は、これらを「無駄遣いの域を超えている」とまで批判した。

   その理由として、10年春の大学新卒者の就職率が91.3%と、世界最高水準であることを挙げる。「残りの1割弱は20社ぐらい受けているはずであり、それだけ受けて落ちるような人間の就職支援のために、なぜ税金を使う必要があるのか」というのだ。つまり、優秀でない学生の就職のために、税金を使うべきではないということだ。

   ネット上でも、この部分がポストのニュース配信になり、これに対して、賛否それぞれの声が相次いでいる。

   2ちゃんねるでは、大前氏への反論としては、就職できなかった若者を救わなければ、治安悪化など社会が不安定になる、との声がある。さらに、雇用が進めば、消費市場も拡大して税収も逆に増える、少子化を防ぐ効果がある、といった意見も出ている。

   旧労働省出身の濱口桂一郎政策研究大学院大学教授は、自らのブログで、大前氏の主張では、優秀でない学生は、野垂れ死にするか、生活保護で細々生きるしかないと指摘。マクロ経済的には、政府政策は、生産活動につながるメリットがあるとしている。

厚労省「就職率高くても、就職できない実数多い」

   一方で、ネット上では、大前研一氏の主張に共感する声も多い。

   2ちゃんでは、雇用規制を緩和して、労働市場を流動化させる方が先決だとの声がみられる。また、大卒後4年以上の中途採用が滞ってしまう、本当の新卒者が採用されにくくなる、といった意見もあった。さらに、企業がカネをもらうために不正をするのでは、という不安も出ている。

   こうした声に、政府はどう考えるのか。

   厚労省の若年者雇用対策室では、大前氏の主張に対し、こう説明する。

「確かに就職率は高いとみられていますが、就職できない学生の実数は、相当な数に上ります。それだけで7.5万人もおり、このまま放置すれば、フリーターになるなどして、社会的に大きな負担が生まれます。20社も落ちていると言っても、状況によります。そこで、新卒に近い人は、正社員として採用してほしいと助成金を付けることにしたわけです」

   ネット上の意見については、「規制緩和の議論もありますが、まず新卒者の対策が必要と取り組んでいます。政策は重点的に大卒後3年以内としただけで、4年以上の方もハローワークなどで支援しています。新卒者の枠も維持しながら、既卒者も増やすように考えています」と答えている。

   助成金が確定した2010年9月24日時点で、企業の新規求人1.8万人分を確保したという。ただ、就職できなかった学生は、この3年間で計15.5万人おり、求人が学生の希望とミスマッチの可能性もあり、どの程度の効果があるのかは不明だ。

   文科省でも、経団連などに大卒3年以内を新卒扱いにするよう要請している。が、学生留学生課によると、まだ意見交換をしている段階で、経済界の結論は出ていないという。

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