日本酒の消費量の減少に歯止めがかからず、老舗の蔵元が看板を下ろしつつある。江戸時代から続く福井県の酒造会社も、多額の負債を抱えて経営に行き詰ってしまった。
国内では、市場拡大のメドは立っていない。一方海外では、小規模ながら徐々に輸出量が増えている。縮む国内消費を打開するカギとなるだろうか。
江戸時代から続く福井の源平酒造が破産
福井県大野市の源平酒造は2010年9月29日、福井地裁に自己破産を申請し、破産手続きの開始決定を受けた。負債総額はおよそ1億2000万円。1億円以上あった売上高も、09年9月期は6500万円に落ち込んでいたという。1673年創業と江戸時代前半から続く老舗で、「源平」ブランドで多数の賞を獲得してきたが、今後はスポンサーを募って事業の継続を目指す模様だ。
10年7月には、明治時代に創業した新潟市の上原酒造が民事再生法を申請。09年にも舞姫酒造(長野県諏訪市)などが同様に民事再生法の適用を受けており、酒造会社の苦境は続いている。
背景には、国内における日本酒販売量の深刻な低下があるようだ。国税庁が毎年発表する「酒類の販売数量」によると、1998年の日本酒(清酒)の販売量は109.5万キロリットルだったが、2008年度は63万1500キロリットルと、10年間で6割以下にまで落ち込んだ計算となる。
日本酒造組合中央会広報部によると、売り上げ低迷にストップをかけようと、最近では地方の蔵元が大都市圏に足を運んでイベントを開き、ピーアールに努めている。それでも、健康志向とともに「ハードリカー」と見られる日本酒を敬遠する傾向が続いているうえ、冠婚葬祭の場でも日本酒が飲まれなくなっているという。「そもそも日本酒を飲まない親が増えているので、その子どもも日本酒の味を知らないままなのでしょう」(広報部)。
海外で人気上向き、米国では消費量倍増
一方、海外市場での人気は上向きだ。財務省の「日本貿易統計」によると、2009年の日本酒(清酒)の輸出実績は1万1949キロリットル。10年前の1.6倍に伸びているのだ。特に米国は10年前と比べて倍以上、韓国に至っては、わずか43キロリットルだったのが1954キロリットルと「45倍」だ。日本で「韓流ブーム」が起きた裏側で、韓国でも日本、中でも食文化への興味を深める人が増え、現地で居酒屋がポピュラーになったことが追い風になったようだ。
海外の「日本酒ブーム」を本格化させようと、日本酒造組合中央会では2010年、世界4か国で日本酒関連のイベントを主催するという。既に米国や韓国に加えて、「11月には中国・上海で開く予定」とのことだ。
とは言え、海外の販売量は国内の2%にも満たない規模。海外需要が国内消費量の低迷を埋め合わせられる水準にはほど遠い。期待を寄せる中国市場も販売態勢が確立されておらず、当面は国内が主力市場であることに変わりはないと中央会では見ている。
だが、売り上げの急回復につながる特効薬があるわけではない。一つの方策として女性をターゲットに、飲料としての日本酒に加えて、料理にも使えるといった魅力を伝えたいと中央会では考える。少しずつファンを増やすような、地道な普及活動を続けるしかなさそうだ。