中国や台湾を上陸調査で刺激したくない
しかし、各省などの担当者からは当時、「調査の大切さは理解できるが、中国や台湾がナーバスになっており、上陸調査で刺激しては……」という趣旨の回答が口頭で返ってきたという。明確な「不許可」ではなかったが、以来「たなざらし」の状態が続いている。結局、1991年ごろに九州大などが行った上陸調査以降、20年近く現地調査は行われていないことになる。
なぜ調査許可は下りないのだろうか。環境省野生生物課によると、3学会の要請については、当時の担当者が「調査の必要性は分かるが、国際情勢などを考えると難しい」という趣旨の回答をしたようだ、という。また、当時の判断は「今も変わっていないと考えて頂いて結構です」。もっとも、調査のための上陸許可は、環境省が直接出すものではないようだ。
そこで、内閣官房の尖閣諸島問題担当にきいてみた。魚釣島は、個人の所有で2002年から政府が借り上げている。「平穏かつ安定的な維持管理をすることが目的」だそうだ。借り上げ以前から、所有者は多くの上陸許可要請を断っていたともいい、「所有者の意向と政府借り上げの目的から総合的に判断し、原則的に上陸は認めていない」としている。
仮に学術調査目的の上陸要請があった場合、環境省なり文部科学省なりがその調査の重要性を判断した上で、内閣官房に許可要請をしてくる流れになる。担当の省を経ずに直接、内閣官房へ調査許可要請をされても困る、ということのようだ。
横畑准教授は、「(センカクモグラなどは)人類共通の財産なので、これらを守るため、大所高所からの判断を頂き、現地調査を認めてもらえればありがたい」と話している。また、多くの人に関心をもってもらい、今後行う予定の講演や署名などに協力してほしい、とも期待していた。