韓国の大手電機メーカー「LGエレクトロニクス」は、薄型テレビで日本市場に再参入し、2010年11月に10機種を発売すると発表した。2005年に地上デジタル放送対応の薄型テレビを発売したが、知名度の低さなどから売り上げが伸び悩んだため、08年に撤退。LGは今や世界でサムスンに次ぐ第2位のテレビメーカーに成長したが、「消費者の要求が高く、海外勢には難易度の高い日本市場」(日本メーカー幹部)に再挑戦することで、さらなるステップアップを目指すと見られる。
「実際に見てもらえれば品質の高さが分かる。デザインや技術力を訴え、高級品が売れる魅力的な市場で顧客層を開拓したい」
アフターサービスと録画機能を重視
9月27日に日本発売モデルを発表した会見で、LG日本法人の李揆弘社長は日本市場で存在感を見せることに自信をのぞかせた。
11月に発売するのは3D(三次元)映像対応機種を含め、全機種が省エネにつながる発光ダイオード(LED)バックライトを使ったタイプ。22~55型まで幅広くラインアップし、想定価格は8万~48万円前後。価格は日本製品並み、あるいはやや高い高付加価値路線と言える。
前回、LGが日本に薄型テレビで進出した際には価格の安い小型に特化する戦略をとったが、シェアを伸ばせなかった。
この時の反省を踏まえ、LGは日本市場を徹底的に研究した。その結果、日本の消費者が求めているのは、アフターサービスと録画機能であることが分かった。このため、再参入にあたっては日本メーカーと同様に全国で修理などができるサポート体制を整備。ハードディスク駆動装置(HDD)をつければ番組を録画できる機能も搭載した。開発陣には日本メーカーに勤務した経験を持つ技術者を交えた。
携帯電話で培ったブランド力もとにテレビに参入
米ディスプレイサーチによると、10年4~6月の薄型テレビの売上高世界シェアは、1位のサムスン電子が24.4%で、2位LGは14.1%で続く。日本メーカーが束でかかっても韓国2社のシェアに届かないが、日本市場では圧倒的に日本メーカーが強い。このためサムスン電子は07年に薄型テレビや携帯音楽プレーヤーの販売を停止。LGにとってはサムスンに対抗するためにも日本市場への再挑戦は必要だったと見られる。
LGはすでに布石を打っている。携帯電話だ。日本でも「薄くてかっこいい」という評価があり、デザインを重視する若者に支持を広げつつある。
携帯電話で培ったブランド力をもとに大量のテレビを販売する戦略は、サムスン、LGが世界で成功した方程式でもあり、従来の「安かろう悪かろう」のイメージを払しょくする可能性を秘める。携帯電話は若者が初めて手にするカネのかかる家電製品。ここから意識を変えていくわけだ。日本メーカー幹部は「いずれ正面から戦わざるを得なくなる」と身構えている。
LGの日本市場での薄型テレビ再挑戦はどこまで成果を上げられるか。まずは年末商戦の行方を関係者は注視している。