裁判所「国民の多くが知っている情報」
「報道機関が報道し、国民の多くが知っている情報を、なぜ真実の追求を目的とする刑事裁判で証拠としてはならないのか、理解に苦しむ」
この事件では、検察側が被告夫婦のインタビューを録画したテレビ映像を証拠として請求し、地裁も採用していた。
青山学院大の大石泰彦教授(メディア倫理法制)は、裁判の流れについてこう解説する。
「オンエアされた映像の場合、将来の取材への悪影響が少ないとされてきています。裁判所がその証拠採用は問題ないとするケースが増え、全体としては緩くなってきていると言えます」
一方で、過去には逆の判決もある。1971年の大阪地裁のものだ。そこでは、オンエアされた映像であっても、「将来、報道機関に有形無形の不利益が生じ、憲法で保障された報道の自由を侵す恐れがある」として、証拠採用を認めなかった。大石教授は、「テレビ局は、取材した人に迷惑をかけないかと裁判を気にするようにもなるでしょう。取材を受ける側も関わってくることで、問題がないわけではありません」と言う。
とはいえ、メディアやネット上では、オンエア映像は、未放送のテープなどと違い、取材活動への支障は少ないはずだとして、証拠採用について肯定的にみる意見が出ている。
NHKの広報部では、取材に対し、オンエアの有無での違いなどの質問には答えず、次のようにコメントした。
「放送以外の目的に使用されると、取材協力者の信頼を損ない、取材・報道の自由が確保できなくなるおそれがあります」
日本テレビとTBSにも取材したが、担当者からは応答がないままだった。