08年度から大幅減で、54億円弱
日本の対中ODAの現状はどうなっているのだろうか。外務省の国別開発協力第1課によると、数字を公表している最新データ(08年度)では、約53億8000万円だ。日本へ返す必要がない無償資金協力と技術協力の費用の合計額となっている。
もっとも08年度以降は、07年度以前より援助額が大幅に減っている。中国の急激な経済成長を踏まえ、以前実施していた有償資金協力(円借款、要返却)を07年度末で終了させたのだ。ちなみに06年度の対中支援は、円借款が約1371億円で、ODA合計は約1700億円だ。
1979年に始まった対中ODAの2008年度までの累計は、約3兆6000億円で、うち円借款が約9割を占める。08年度以降は円借款がなくなったことで、対中ODA額は大きく減額されていることになる。
近く、新著「開発援助政策(仮)」(日本経済評論社)を出版する下村恭民・法政大学名誉教授によると、中国はGDPは高い一方で、国民1人あたりの所得水準は、発展途上国の「中の上ぐらい」だという。「国際的なルール上、援助を受ける資格は十二分にある」。
また、漁船衝突事件とODAを関連付けて撤廃・大幅削減すべきだ、との指摘については、「気に入らないからやめてしまえ、では中国政府と同じ低いレベルになってしまう」と、「大人の対応」の必要性を指摘した。「国が定めているODA大綱にのっとり、原理原則に従って粛々と判断すべきだ」。
そもそも、支援の大半を占めていた円借款がなくなった今、対中ODAは外交カードとしては力不足になっているようだ。外務省によると、中国国内の環境対策など日本にも影響がある分野などが現在の支援対象になっているという。