米露に続き欧州、中国、インドも独自システム整備中
だが、世界では測位衛星の自前整備が大きな流れになっている。既に運用中の米露に続き、欧州や中国、インドも独自のシステムを整備中。欧州委員会は、測位関連サービスが25年には世界で50兆円超の市場になると予測しているが、各国の根本的な狙いは安全保障だ。
GPSは航空機や船舶の公共交通機関のナビゲーションや精密測量など暮らしや経済活動に必要不可欠な社会インフラになってきている一方、米国の都合で使えなくなる恐れもあるのだ。現実に、旧ユーゴ・コソボ紛争でGPSの精度が極端に落ち、ヨーロッパの航空網が混乱したという。
敵に利用されることを警戒した米軍が一般向け電波を制限したと見られている。GPS信号が受信できなくなれば公共交通などが混乱しかねない。日本情報処理開発協会の試算によると、GPSの情報が停止された場合の国内経済への影響は1時間以内でも520億円、半日以上では4320億円以上に及ぶ。こうした事情を考え、各国はGPS依存からの脱却を目指しているわけだ。
実は、「みちびき」と似た機能を持つ「運輸多目的衛星」を国土交通省が打ち上げ、3年前から、航空機のナビゲーションに使われている。「みちびき」との共同開発の声もあったが、国土交通省側は応じなかったという。まさに縦割りの弊害だ。
政府は2009年、宇宙開発基本計画を定め、宇宙技術の利用重視の方針を打ち出した。08年に発足した宇宙開発戦略本部(本部長・菅直人首相)は、2機目以降について検討する各省の政務官による組織をつくり、2011年夏までに2機目以降について結論を出す。縦割りを排して、政治主導で日本版GPSの国家戦略をまとめられるか、課題は重い。