1000円を割り込むような「低価格」化粧品市場がにぎやかだ。2010年9月に入って、資生堂やカネボウ化粧品といった大手が新商品を引っ提げて参入してきたことで、注目度も増している。
化粧品市場が全体的に伸び悩むなか、高価格帯に注力してきた化粧品大手は、低価格帯で新たな顧客層の獲得に向けて動き出した。
市場全体で前年比1.5%減の見込み
市場調査の富士経済が9月16日に発表した「化粧品市場の調査結果」によると、化粧品市場全体の売上高は2009年に2兆1799億円で、前年比2.3%減だった。景気低迷による消費の冷え込みによって、化粧品も買い控えや低価格商品へのシフトが顕著だった。
価格帯別に市場をみると、化粧水などで6000円以上する高価格帯は前年度比0.7%減、中価格帯は3.8%減、2000円以下の低価格帯は1.2%減だった。同社は「市場は2極化の状態といえ、低価格帯は消費者ニーズがさらに低価格の商品にシフトしているため、売上金額は伸び悩みました」と説明。2010年も市場全体で前年比1.5%減を見込んでいる。
そうした中で、資生堂は9月中旬から低価格帯市場の商品として「専科」シリーズを投入。第1弾は化粧水で980円と、1000円を割った。同シリーズは、10年中に台湾、11年以降には他のアジア各国に導入する計画。日本とアジア市場を一体化した展開を図ることで、スケールメリットを追求してコスト効率を高め、それによって低価格ながら高機能な化粧品を実現する。
また、カネボウ化粧品が発売した「フレッシェル ザ・ベーシック」は、化粧水や乳液を1050円で販売している。ターゲットは30~40歳代の家事や仕事に追われて自分のことを後回しにしてしまう、「後回し世代」が対象。なかでも「節約志向のニーズを汲みとった」という。現在、注力している商品群の中では一番下の価格帯だ。
コーセーも子会社を通じて、40~50歳代向けの新ブランド「クリニティ アクティライズ」を8月下旬に発売。1000円前後の基礎化粧品を取り揃えている。
「安さ」追求、ブランド力低下の懸念
化粧品大手の参入が相次ぐ「低価格」化粧品市場だが、この市場は「ちふれ」ブランドを展開するちふれ化粧品や、ロート製薬の「肌研」(肌ラボ)が先行している。「ちふれ」は300円のリップカラーをテレビCMで売り出し、新たな需要を掘り起こしに成功。「低価格」化粧品は、豊富なカラーバリエーションや「肌にいい」などの高機能を「武器」に売ってきた。
激戦市場になったが、化粧品業界のある関係者は「大手が参入したからといってパイが広がるわけではない」と冷ややかに語る。
低価格競争になるほど「大手有利」にみえるが、前出の富士経済は「低価格志向が強まっていることは確かですが、価格だけでないのが化粧品のむずかしいところ。消費者の好みやブランドイメージも売上げを左右します。低価格商品に注力することで、かえって資生堂やカネボウといったブランド力そのものが落ちることも懸念されます」と話す。
ロート製薬の「肌研」は機能性が「売りもの」。「製薬会社がつくった化粧品」ということでの信頼度を強みとする。「安さだけではない魅力と、一日の長もある。そう簡単にはシェアは崩れない」(前出の関係者)とみている。