大阪地検特捜部の不祥事発覚は、若い検事らの周辺によるリークがきっかけだった可能性があることが分かった。週刊朝日も、新聞本体がスクープした1週間ほど前に、地検関係者から内部書類の提出を受けたことを明らかにしている。
「もう部長の顔も副部長の顔も見たくない」
「2人にものすごく腹が立っている」
週刊朝日にも、大阪地検関係者から連絡
産経新聞の2010年9月29日付記事によると、不祥事を内部告発した公判担当の検事は、同僚にたびたびこう漏らしていたという。
報道によると、前田恒彦容疑者(43)が証拠のフロッピーディスクを改ざんした疑いが持ち上がったのは、1月27日の郵便不正事件初公判の直後だった。
当時、大阪地検刑事部から応援に来ていた取り調べ担当の男性検事(35)に対し、前田容疑者が「時限爆弾を仕掛けた」と日付書き換えを認めたのだ。これを問題視した男性検事は、後に公判担当となる特捜部の女性検事(41)らと同30日に特捜部の副部長や部長に対し、証拠の改ざんがあったと内部告発。そして、9月21日になって、朝日新聞が改ざんの疑いをスクープし、不祥事が表ざたになった。
それはどうやら、若い検事らの周辺がリークした可能性があるようなのだ。
週刊朝日の9月28日発売号によると、スクープの1週間ほど前に、大阪地検関係者から編集部記者らの1人に連絡があり、改ざんを示す内部書類の提出を受けた。一方、週刊新潮は、「美女検事」らの周辺が朝日新聞の記者に改ざんをリークしたと報じており、週刊朝日のケースもあることから、検事らの関係者が新聞や週刊誌にたれ込んでいた可能性がある。
その背景には、産経が報じたような公判担当の「美女検事」らの怒りがあるようなのだ。
当時の特捜部長らは、フロッピーの日付書き換えを前田容疑者の「過失」とみなし、突っ込んだ調査も外部への公表も行わなかった。
「関西検察」、親分・子分の師弟関係
また、週刊朝日によると、前田恒彦容疑者が個人パソコンを無許可で持ち込み、書き換えソフトを入手していたことを、検事周辺とみられる地検関係者が2010年3月下旬に耳にしたという。つまり、前田容疑者は、フロッピー改ざんのようなことを再びしようとしていたというわけだ。
さらに、若い検事らにも、左遷と思われるようなことが起きる。内部告発した女性検事が特捜部から公判部に異動になり、特捜部に移るとみられた刑事部の男性検事は異動がなかったのだ。
真相は不明だが、こうしたことが不満の引き金になり、検事周辺がリークした可能性はありそうだ。
もしこれが本当だとすると、なぜ大阪地検特捜部は、これほどまでに腐敗したのか。
元東京地検検事の大澤孝征弁護士は、特捜のおごりがあるのではと指摘する。
「筋書きに基づいて捜査するのは、いけないというわけではありません。科学で立てる仮説などと同じで、その証拠が認められないときは、別の仮説を立てるわけです。しかし、成功体験を重ねて筋書きが絶対という硬直した考えになり、被疑者がおかしいと思ったり、事実を曲げたりする倒錯した精神状態になっていた可能性があります」
また、大阪ならではの問題があるかもしれないと言う。
「人事が地元だけで回る『関西検察』の慣習があり、親分・子分の師弟関係が強く出てしまいます。つまり、軍隊組織に近く、上司にモノを言える雰囲気がなかったわけです。また、東京に対抗意識があり、負けてはいけないと突っ走るところがあったかもしれませんね」
取り調べ可視化のほか、特捜不要論まで出ていることについては、こう述べる。
「被疑者が本当のことを言わなくなるので、可視化には基本的に反対です。それは仕方ないとしても、司法取引などの導入が必要でしょう。特捜がなくなって喜ぶのは、巨悪や権力者です。どんなことがあってもなくしてはダメだと思いますね」