中国側に拿捕されたらどうするのか――。中国漁船衝突事件のあった尖閣諸島に近い沖縄の離島では、漁業関係者らにこんな不安が広がっている。そんな状況を変えようと、地元の議会や漁協が、毅然とした対応を求めて、国に直訴することになった。
「カツオ船の船主から、政府にメッセージを送ったらよいと要望がありました。うちは10トンほどの船なので、166トンもある中国漁船にぶつけられたらと思うと、とても不安なんですよ」
1日で中国漁船270隻現れ、70隻が領海侵犯
尖閣沖で冬場に漁をしている沖縄・伊良部漁協の友利義文組合長は、こう訴える。
海上保安庁の調べによると、事件前の8月中旬に、1日で最大270隻の中国漁船が尖閣沖周辺に現れ、うち70隻ほどが日本の領海内に侵入した。さらに、事件を起こした中国漁船の船長が釈放されてから、尖閣沖周辺に、中国の巡視船や海洋調査船が多数現れるようになったと報じられている。
地元の漁業関係者らにとって、こうした状況は死活問題にもなりかねないわけだ。友利組合長は言う。
「国が証拠ビデオを公開するなどして、毅然とした対応をしなければ、安心して操業なぞできません。尖閣沖は、漁場としては最高のところです。しかし、今後は、中国漁船の違法操業が増えて、どんどん魚が獲られてしまう可能性があります。また、中国側に操業を止められたり、場合によっては、拿捕されたりすることも考えておかないといけないでしょうね」
これまで自衛隊を配備することについて、米軍基地移転への懸念から、伊良部島住民から根強い反対があった。しかし、友利組合長は、「今度の事件で、海上保安庁だけでは防ぎきれないのではと感じました。緊急時には自衛隊が近くにいないと対応できないので、やはり頼らないといけないのかなとも思っています」と漏らす。