アジア諸国で広がる中国脅威論 「尖閣問題」に疑念、懸念、警戒

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   尖閣諸島沖の漁船衝突事件に端を発した日中両国の関係悪化は、周辺諸国にも影響を与えている。各国の報道で「中国脅威論」を唱える国が出てきたのだ。

   中国と並ぶアジアの大国インドの新聞では、中国を「安全保障上の心配の種」と呼ぶ。近年、中国と雪解けが進む台湾のメディアも、「目的を果たすためには武力すらいとわないのでは」と疑いの目を隠さない。中国との領土問題を抱える東南アジアでも、日中、さらには米国の関係がこじれて火の粉が降りかかることに懸念を示している。

「最終的には武力の使用もありうる」

国としての成熟度と成長力は反比例か
国としての成熟度と成長力は反比例か

   インドの「ヒンドゥスタン・タイムズ」(電子版)は2010年9月25日の社説で、中国の日本に対する強硬な対応を取り上げた。中国の台頭はアジアの安全保障に懸念を抱かせるもので、尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船の船長を日本側が拘束したことについて、同紙は「中国側はほとんど狂乱ともいえる反応」をとったと表現。将来大国となる中国の成熟度は、その急成長ぶりに反比例していると断じた。一部のメディアでは、問題解決に向けた日本の政府高官との会談を拒否した中国を「やりすぎ」と伝えたところもある。

   中国との関係では、地理的にも歴史的にも最も神経質になるといえるのが台湾だろう。英文メディア「タイペイ・タイムズ」(電子版)は9月27日、「東アジアの新秩序」と題した社説を掲載。日本側が中国人船長を拘留したため、中国が予想以上に日本に対して強い姿勢を見せていることは、台湾にとっても「教訓」になるとしている。そのうえで、「中国と将来的な緊張緩和を望む台湾の首脳にとって、今回の中国の対日政策は、その成長力だけでなく攻撃性を示している」と書いた。さらに、中国が見せる懐柔的な対話や、相手側の地域的な主導権を強く否定する姿勢を通して、「中国は目的達成のためには武力の使用もありうるだろう」と警鐘を鳴らしている。

「踏みつけられる草になるな」

   南シナ海では、南沙諸島をめぐって中国とベトナム、台湾、マレーシア、フィリピン、ブルネイが領有権争いを繰り広げており、日中関係の「亀裂」で、米国を巻きこんだ大規模な領土問題に発展するのを恐れる地域もある。フィリピンのメディア「ABS CBNニュース」(電子版)では、9月23日の解説記事で、「中国の経済力が増すにつれて、中国に対抗するほどの力を持たない隣国の多くは、自国の領土的野心をどれほどもち続けられるかに気づいただろう」とした。

   同紙はさらに、シンガポールの国際関係論の専門家が語った「小国は『猛牛同士が闘っている最中に踏みつけられる草』になってはいけない」ということわざを引用して、周辺国の「心構え」を示す。そのうえで、ASEAN(東南アジア諸国連合)元事務総長の、「東南アジア諸国は日中や米中間の関係悪化を望まない。中国は武力に訴えるようなことをしてはならない」との主張を紹介している。

   中国の温家宝首相は米国時間9月23日、国連総会で演説。国家主権や領土保全について「屈服も妥協もしない」と語った。中国の姿勢を国際社会に改めて示した格好だ。日中の関係改善の糸口もいまだ見えないまま、周辺諸国の心配は続く。

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