病気療養中で、所属事務所から独立したシンガー・ソングライター絢香さん(22)の「印税ライフ」に注目が集まっている。「5億円?印税ライフ」との優雅な生活を思い起こさせる報道から、全く逆の「独立失敗」の見立ても伝えられている。
「絢香『5億円?』印税ライフ」との見出しを付けたのは、週刊誌AERA最新号(2010年10月4日号)だ。一方、9月27日には、芸能ナックルズが「絢香独立失敗するこれだけの理由」として、絢香さんの印税生活に対し厳しい見方の記事をネット配信した。
水嶋ヒロと夫婦そろって独立
「三日月」(06年)などの大ヒットで知られる絢香さんは09年、俳優で同じ事務所(研音)の水嶋ヒロさん(26)と結婚した。同年末のNHK紅白歌合戦を最後に、バセドウ病の治療のため活動を休止し、その後事務所を辞め自身の楽曲管理会社を設立した。夫の水嶋さんもこのほど事務所を辞めたばかりだ。夫婦そろって独立した形だ。
独立後の水嶋さんの仕事の先行きが不透明な中、それでも独立できたのは、絢香さんの印税収入のお陰だ――こうした見方を伝えたのが、AERA最新号記事だ。「アルバムだけで3億円の印税が入る計算だ」「シングルでも、少なくとも2400万円の印税が支払われると見られる」などと伝えている。
さらに、「ロード」(1993年)のヒットで知られる高橋ジョージさん(作詞・作曲・THE虎舞竜ボーカル)が9月14日、「夢の印税」をテーマにした映画キャンペーンの中で「いまだに年間1200万円が黙っていても入る」と語ったことにも触れて、「絢香のカラオケ人気を考えると、いま彼女の印税は高橋さんより多いでしょう」との芸能コメンテーターの見方を紹介している。「着うた」などの楽曲ダウンロードに伴う「相当額」の収入についても指摘している。
一方、芸能ナックルズ記事では、作詞や作曲などの印税などは「4~5%でしかない」、「歌唱印税は1%や2%」だとして「儲からない」と、関係者が語っている。以前所属していた事務所など音源管理権をもっているとみられるところが過去の絢香さんの曲の使用を認めなければ、今後新たにヒット曲を生み出すしかない、とも指摘している。それなりの金額は手に入るが、楽曲管理会社を運営するほどの利益はあがらないのでは、といいたいようだ。
カラオケでどこまで息長いヒットになるか
「よくわかる音楽著作権ビジネス 実践編」などの著書がある北海道大法学部の安藤和宏・特任教授によると、基本的には個別の契約次第だが、大まかな傾向として次のようなことが言えるという。作詞家と作曲家にはそれぞれ1.5~2%、いわゆる歌い手のアーティスト印税が1~2%というケースが多いそうだ。
絢香さんの過去の3枚のアルバムは、100万枚超え2枚を含み、累計300万枚を超えている。これにシングルも含めれば、作詞を中心に作曲も手がける絢香さんには、すでにCD関連だけでざっくりした試算で3~4億円が入った可能性がある。
もっともこれは「過去」の話で、今後も以前発売したCDが同じペースで売れ続ける可能性は低い。安藤教授は「過去の作品でどれぐらいの印税収入になるのかは、今後カラオケでどこまで息の長いヒットになるかにかかっている」と指摘する。大ヒットした曲が必ずしもカラオケ人気曲として生き延びることができるわけではない、ともいう。
カラオケ総合サイト「うたウガ」の09年カラオケランキングをみると、絢香さんの06年作品の「三日月」が10位に入っている。ちなみに「年1200万円」の高橋ジョージさんは、ランキングに入っていない。絢香さんは、「年1200万円」を大きく上回る印税を手にするのだろうか。もっとも、高橋さんのケースは、レコード会社などに所属しない形で楽曲をつくったため、「取り分」が絢香さんとは大きく異なっている。