「ビジネスでは、目に見えないリスクをたえず意識する必要がある。しかしグローバル時代のビジネスは、国を超えて行われるのだから、どちらの政府も双方のビジネスが互いに関連していることをよく考えて政策を決めて欲しい」
パナソニックの大坪文雄社長は2010年9月27日、東京都内で開いたマスコミ懇親会でこう強調し、中国政府が沖縄・尖閣諸島沖の衝突事件を機に対日貿易規制を強化する動きに出ていることについて冷静な対応を求めた。
「今のところ品不足など、緊迫した状況にはない」
当面注目されているのは、中国が世界生産量の約97%を占めると言うレアアース(希土類)の対日輸出規制。ネオジムなどのレアアースは高性能磁石に不可欠でハイブリッドカーや省エネ家電などのモーターに幅広く使われている。
「今のところ品不足など、緊迫した状況にはないが、手に入らない状況が長期化するようなら、価格高騰などの懸念がある。代替材料開発は着実に進めるが、ある程度の時間はかかるだろうから、時間との戦いが心配だ」という。
パナソニックにとって中国は重要な家電市場。しかし最近ではパナソニックグループの工場も労働争議に巻きこまれるなど、リスクも同時に経験している。そこに新たに輸出規制のリスクが忍び寄っている。「中国は日本とは社会システムが違うことを意識する必要がある。ビジネスでは目に見えないリスクが一番怖い。両国政府とも何が起きているのか、よく見える形で解決に道筋をつけて欲しい」と強調している。