プラズマ方式の薄型テレビでは世界最大のメーカー、パナソニックが本格的な増産体制に入っている。近い将来、全てのテレビに3D機能が装備されるとにらみ、一気にシェアの拡大を狙っている。
パナソニックのプラズマパネルはパナソニックプラズマディスプレイ社の尼崎工場で生産されている。尼崎第3工場を2004年に着工して以来、第4、第5と建設し、総投資額は約5000億円。
消費電力が大きい欠点を克服しつつある
これに上海工場を合わせた生産能力は月産108万5000台(42型換算で計算)。第3、第4工場はすでにフル稼働しており、10年下期を目処に、第5工場が月産33万台のフル稼働の量産体制にシフトする計画だという。
プラズマテレビの出荷台数は、液晶テレビに年々差を広げられている。調査会社ディスプレイサーチに聞いたところ、全テレビブランドによる2009年の日本国内での出荷台数は、液晶テレビが1253万4000台なのに対して、プラズマテレビは116万9000台と大きく水をあけられている。生産量も液晶に遠く及ばない。電子情報技術産業協会が発表した2010年7月の日本の電子工業生産実績表を見ると、液晶テレビの生産台数が92万2854台、一方プラズマテレビを含む「その他カラーテレビ」は14万8257台となっている。
プラズマ方式のテレビは液晶方式に比べて消費電力が大きいなどの欠点が指摘されてきた。しかし、同社は最近、節電効果を高めたという。液晶との消費電力を比較する計測器を展示しており、それを見る限り、液晶の80から90%の消費電力である。
「プラズマ方式のほうがインパクトが強いので、3Dに向いている」
液晶が半導体技術であるのに対し、プラズマは焼き物の技術である。同工場では、パネルを9時間、オーブンのなかで焼く。内部を見ると、人間の姿がほとんど見えない。ロボットでパネルを移動させながら、焼いたり、切ったりしていくが、そこに人の手は使われていない。無人工場といってもおかしくない。工場の人員数は公表しない。
人間が働いているのは、製品を運び出す運搬の部分だった。ほかには、パネルの表示精度を点検するのは人間の目。資格を持つ工員が一枚ずつ目視で行う作業だが、「コンピューターより人間の目のほうが、現時点では能力が高い」という説明だった。
生産されたパネルは、同社の茨木工場でテレビセットに組み立てられる。このとき、3Dの機能が加えられる。パネル自体は普通のテレビと3Dは同じものである。
同社の長野寛之社長は、「プラズマ方式のほうがインパクトの強い画面なので、われわれは3Dに向いていると考えている。全てのテレビが3Dになる時代は間もなくやってくるので、そのときに備えて増産態勢に向かっている。ただ、円高は脅威だ。今のところ部品、素材は国内で調達しているので、海外で売る場合に不利だ。1ドル100円前後であってほしい」といっている。