低迷する地方の競艇やオートレースなどの公営競技で、カネをかけない「企画モノ」が目立つ。豪華ゲストや有名選手といったやり口ではなく、知恵を絞って客を獲得しようというのだ。
血液型に目をつけて「B型だけの選手」を集めたり、選手全員が同じ名字だったりと、あの手この手の集客作戦は功を奏しているか。
43人の競艇選手全員B型
広島県廿日市市の「ボートレース宮島」で、ちょっと変わったレースが2010年9月18日~23日に行われた。出場した43人の競艇選手全員、血液型がB型だったのだ。血液型が同じというだけで、キャリアも年齢も実力も違う選手たちが混じって競い合うレースは珍しい。
宮島競艇施行組合に聞くと、7月にも「A型選手権」を開催し、10月には「O型大会」を実施するという。話題性を高めようと思いついたのが「血液型別レース」で、今年初めての試みだ。手ごたえはまだ分からないが、血液型以外にも「ヘビー級王決定戦」と称して体重の重い選手だけを集めたレースを企画するなど、何とか競技を活気づかせようとの思いがうかがえる。
血液型には、オートレース場でも目に付けたところがある。千葉県の「船橋オート」では10年3月26日に「血液型対抗戦」を実施。A型対O型、A型対B型、O型対AB型の3レースを開催した。
「鈴木vs吉田選抜戦」に「還暦鉄人戦」
福岡県の「飯塚オート」も、企画レースを実施した。2009年2月17日の第9レース、出走する8人のレーサーは「田中耕三」「田中正樹」「田中進」など全員の名字が「田中」で、このレースは「田中選抜」と名づけられた。飯塚オートに聞くと、田中姓の選手が多くそろったのは偶然だったようだが、出走の組み合わせを決める際に「せっかくだから『田中だけ』のレースにしてはどうか」と実現した。ユニークな企画が注目を浴び、その後テレビ番組で2、3回このときの模様が取り上げられたそうだ。
「2匹目のどじょう」をねらったのか、2010年2月17日には鈴木姓と吉田姓を4選手ずつ混ぜての「鈴木vs吉田選抜戦」、さらにはオートレース誕生60周年に引っ掛けてレーサー全員が60歳を迎える「還暦鉄人戦」を開催。ただ現時点では、観客数や売り上げ増加につながったという目に見える効果は、まだ出ていないと言う。
競艇やオートレース、競輪、地方競馬といった公営競技は数年来、慢性的な営業不振が続いており、廃止に追い込まれる競輪場や競馬場も少なくない。テコ入れをしたくても先立つものがないだけに、すべてはアイデア勝負。「少しでも話題になれば」と、関係者は祈るような気持ちで企画しているのかもしれない。