高橋洋一の民主党ウォッチ
尖閣問題こじれさせる  民主の外交オンチ

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日本側は「懇願したのに等しい」

   現実には、仙谷官房長官の予測は見事に外れた。しかも、領土内で国内法で対処するという基本原則からも、この発言は問題がある。公務執行妨害の疑いであれば、一定期間、船長だけでなく、船長以外の14人と船もよく調べなければいけないだろう。こうした場合、原理原則なく場当たり的に処理してはいけない。仙谷官房長官の発言は、日本としては「穏便にやりたい。船長以外と船は返すので、これでおさめて欲しい」と懇願したのに等しいわけであるので、中国側として、日本が弱みを見せたので、強硬にでてくるのは当然である。

   中国は、単に日本を試しているだけでなく、これをネタに日本から大きな譲歩を得られると考えているだろう。菅直人首相は9月22日から25日まで、国連総会出席を含めてニューヨークに出張するが、温家宝首相との日中首脳会談は開かれない。

   菅政権内では、11月13~14日、横浜市で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに、関係修復すればいいとの意見もあるが、それは「ボールは日本にある」ということを認めるわけで中国の「責任は日本にある」と同じである。そうなると、日本は譲歩するという道にはまり込む。初期動作の失敗から負け続けるというパターンにはまりかけている。

   ニューヨークで日本が米国に傾斜すれば、対中関係で助けになるだろうが、その場合は普天間問題が民主党に重くのしかかってくる。民主党の危機管理能力の欠如で、日本はとんでもない重荷を背負ってしまった。

   こうした状況での鉄則は、政府は冷静に、議会は熱くだ。それは長い目でみて政府の外交対応力を高める。その意味で、尖閣問題で国会は閉会中審査を行うべきだ。もし民主党が消極的ならやはり外交オンチと言わざるをえない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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