東京・渋谷の高級フランス料理店「シェ松尾」が経営難に陥り、事業を譲渡することが分かった。創業30周年を迎えた矢先のこと。不景気で接待が減り、フレンチの名門老舗もそのあおりをうけたようだ。
東京商工リサーチが2010年9月17日に明らかにしたところによると、シェ松尾およびグループ会社のシェ松尾エンタープライズは「9月中旬以降の資金繰りの目処が立たず事業継続が困難となったことから、事業支援会社に事業を譲渡。9月16日、事業譲渡及び債務整理に入る」旨の通知文を関係先に送付した。ただ、その後も営業は継続している。
J-CASTニュースの調べでは、渋谷の松涛レストランを除く事業全体が中華料理店を運営するホーコーフーズ(東京・中央区)に譲渡されることが分かった。
企業の接待減少が原因か
シェ松尾は、シェフの松尾幸造氏が渋谷区松涛の高級住宅街に佇む洋館を改装し、1979年に営業を開始した。当時は邸宅レストランが珍しく、「皇室御用達」「芸能人が通う店」としても名を馳せてきた。現在も、ランチは8400円、ディナーは2万1000円~5万2500円のコース料理が用意され、高級路線を貫いている。
同社は、松涛レストランのほかに「青山サロン」(渋谷区)と「天王洲倶楽部」(品川区)の高級フランス料理店を経営、それぞれブライダル会場としても営業していた。また、関東を中心にカジュアルレストランや洋菓子喫茶店の営業、洋菓子および贈答用惣菜の販売など、グループ全体で19店舗まで拡大していた。
東京商工リサーチによると、2007年3月期には約19億5000万円だった年商が、09年3月期には約13億3000万円に減少。不景気の影響で接待に利用する企業が減少し、金融機関からの資金調達も困難になっていたという。