B級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリin厚木」が2010年9月18日・19日、神奈川県厚木市で行われた。ふだんは食べられないご当地グルメの数々が楽しめるのはもちろんだが、もうひとつの見所がある。それは各参加団体によるPR合戦。人目を惹くユニークな衣装を身に付けたり、歌やダンスを披露したり……。地元愛あふれるアピールに会場は大盛り上がりだった。
「県一丸となって」
初参加だった福島県浪江(なみえ)町のご当地料理「なみえ焼そば」を積極的にアピールしたのは、アイドルグループ「AKB48」を思わせるコスチュームを身にまとったPRユニット「NYTS(ナイツ)」だ。メンバーは小学6年生から中学3年生までの8人。会場内に設置されたステージには、「アトラクションタイム」として料理などをPRする時間10分ほどが用意されているが、「カワイー」「イエーイ」と観客席からの歓声が最も大きかったのは彼女たちの時だった。
8人は息のあったふりつけでダンスを披露しながら、焼きそばや浪江町のPRソング「恋する焼きそば」「ゴーゴーNYTS」を含む4曲を熱唱した。企画立案者の商工会青年部部長・阿久津雅信さんによると、町のPRをアイドルグループがしたら面白いだろうなということから発想。メンバー募集を町内の新聞に掲載して希望者を集め、オーディションを経て09年11月に結成された。
「NYTS」とは、「浪江(N)焼麺(Y)大国(T)Shine輝組(S)」の頭文字で、サポートメンバーがPRソングを作詞・作曲し、ダンスの振り付けを考えた。彼女たちは毎週日曜に集まり、踊りの練習を続けてきたという。これまでにも地元でのイベントには何度か出演経験はあったものの、「これほどの大人数の前で披露したのははじめて。よく踊れているのは練習の成果が出ているからだと思います。だってみんなが笑顔だしね」と阿久津さんは顔をほころばせていた。
一方、中世ヨーロッパ貴族風の姿で人目を惹いていたのが青森県十和田市のご当地グルメ「バラ焼き」の販売ブース。「十和田バラ焼きゼミナール」の代表・畑中宏之さんはこの衣装について、「バラ焼きの『バラ』とベルサイユの『バラ』をかけたんです。ベルサイユのバラといえばフランス革命でしょ。ぼくらで(バラ焼きの)市民革命を起したいという思いを込めました」と最高の笑顔だ。
畑中さんは、いかに興味を持ってもらえるかがとても大事だと言い、来場者を楽しませる工夫に余念がない。同じ青森県には、B級ご当地グルメによる町おこしをはじめに全国に呼びかけた「八戸せんべい汁研究所」があり、双方は交流を続けてきた。先輩に当たる彼らからノウハウを学び、今回が初出展。青森県からは計4団体が参加したが、畑中さんは「自分たちの町だけを考えたらよくならないと思うんです。青森県一丸となって盛り上げていきたいですね」。
「B級イケメン」も
その「八戸せんべい汁研究所」のブース前では、アニメソング風のせんべい汁PRソングを完璧な振り付けで熱唱、来場客による手拍子が響いていた。歌うのは、うっちゃん、みかちゃん、まこっちゃんによる3人組「トリオ★ザ★ポンチョス」だ。実は同曲、4年前から全国発売もされており、今やB級グルメ界ではよく知られている。「八戸せんべい汁」といえば、第2回大会以降、準グランプリ、3位入賞とグランプリを逃しているが、メンバーのうっちゃんこと内山千早さんは「みんなが楽しんでくれれば、本当はグランプリじゃなくてもいいんですよ。これを機に青森を知って、遊びに来て欲しいと思います」と話していた。
ほかにもユニークなアピールはたくさんあった。秋田県仙北市からは「神代カレー」をPRするアクションヒーロー「神代カレンジャー」が駆けつけてショーが行われ、静岡県富士宮市の「富士宮焼きそば」の宣伝には、ふだんは地元の市役所で働くイケメン隊が登場。隊長の藤原智之さんは「今回のために招集されましたが、『B級』のイケメンということで期待しないで。焼きそばにちなんだソース顔ばかりでしょ」と会場を笑わせていた。また、各地のご当地ゆるキャラたちも総動員。気軽に写真撮影に応じ、和やかなムードに包まれていた。
首都圏でははじめての開催となった今大会には、初出店となる18団体を含む、過去最多の46団体――北は北海道富良野市から南は大分県佐伯市までが参加した。来場者による投票で19日に決定した大会グランプリは、初出場の「甲府鳥もつ煮」(山梨県甲府市)だった。