おニャン子は、テレビが生んだアイドル
―――AKB48が社会現象になるほどのブームになった要因はなんだと思いますか?
秋元 う~ん…。ゆっくり、時間をかけたことですかねえ。ブレークまで4年半、かかっていますから。少しずつ少しずつ、ファンが増えたんでしょう。「刺さるコンテンツ」になったんだと思いますよ。大切なのは、「ガチ」だということじゃないですか?予定調和ではなく、本当に、普通の女の子がアイドルになってゆく過程を、編集なしで観せたドキュメンタリーですから。AKB48は、4年半、ドキュメンタリーを提供し続けているんだと思います。高校球児に近いです。秋葉原にできた無名の高校の野球部が、野球経験もない部員を集めて、一生懸命練習して、予選を勝ち抜き、甲子園に出場し、何回かの挑戦の後、優勝したというような…。地元の応援団のように、ファンのみなさんと喜び合えるのがAKB48ですね。
―――おニャン子クラブやモーニング娘。とは、どこが違うんでしょう?
秋元 おニャン子クラブは、テレビから生まれたアイドルです。素人がアイドルのように歌を歌うのが新鮮でした。まるで、女子高の部活のようでした。ファンは、放課後の部活を女子高の金網越しに観ていたんですね。「新田恵理ちゃんは、中間テストのためにお休みです」という報告がリアルでした。それまで、アイドルは仕事優先でしたから。視聴者の身近な存在だったんです。さらに、進化したのが、モーニング娘。です。つんく♂がミュージシャンなので、音楽のクオリティーが高いです。みんな、可愛い上に、歌やダンスが巧いことに驚きました。つまり、おニャン子クラブは、普通の女の子をそのままを観せましたが、モーニング娘。は、厳選した女の子にさらにレッスンさせて、プロにしたということでしょうか。AKB48は、そのプロセスを観せるアイドルということです。
―――AKB48は、恋愛禁止なんですか?どういう場合に解雇になるんですか?
秋元 恋愛と仕事のどちらを取るか、ということです。たとえば、甲子園を夢見ていたら、恋愛なんてできないと思うんですよね。恋愛に割く時間があったら、練習した方がいいでしょ?AKB48というのは、教育の場でもあります。未成年の場合は、特に厳しいです。学校の退学処分と同じような基準でしょうか?メンバーは、マネージャーやスタッフに通信簿がつけられます。歌やダンスの成績以上に、生活態度が採点されます。僕がこのメンバーを「こうしたい」と言っても、マネージャーやスタッフから、生活態度で反対されることもあります。でも、それはメンバーが必ずしも悪いわけではなくて、そのコにとって「校風に合わない」ということかもしれません。転校したら、ぐんと成長したなんていうコもいるでしょうね。