市民を巻き込んだ調査報道 こんなネットメディア目指す
「ピューリッツァー賞」受賞プロパブリカに聞く/創刊4周年記念インタビュー第6回

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メキシコ湾原油流出で「市民ジャーナリズム」展開

編集長のポール・シュタイガー氏(写真提供:ProPublica)
編集長のポール・シュタイガー氏(写真提供:ProPublica)

――既存メディアとは違うプロパブリカの独自性はどこですか。

プロパブリカ テレビや新聞といった既存メディアとは協力関係にあり、業務内容や方法論には共通する部分もあります。しかしニュースメディアの多くは、1人の記者に1つの記事内容だけを追わせたり、たった1つの題材に半年以上もかけさせたりすることは不可能です。プロパブリカでは、記者が長期間の取材をまっとうできるように、必要な支援を惜しみません。

――では、その独自性を伸ばしてオンラインメディアとして成長するために、カギとなるのは何だと考えますか。

プロパブリカ ソーシャルメディアを重視しています。SNSの「フェースブック」やツイッターは有効だと思います。私たちのプロジェクトを読者に知らせるツールとして利用したり、読者同士がフェースブックで経験や意見を共有したりしています。ソーシャルメディアは、プロパブリカが目指す「市民ジャーナリズム」、つまり読者を巻き込んだ報道の形を実現する一助となります。
   市民ジャーナリズムの実践では、こんな事例があります。2010年4月に発生したメキシコ湾原油流出事故で「BPへの賠償請求プロジェクト」を立ち上げました。これは、大手石油会社のBPに賠償請求を行った人々に呼びかけて、その詳細を記者と読者で共有するもので、プロパブリカのウェブサイトにはさまざまな意見、体験談が寄せられています。フェースブックでも「特設サイト」で読者に情報提供を呼びかけると同時に、ツイッターへの投稿も促しています。
   ピューリッツァー賞を受賞したとはいえ、私たち自身に何か変化が起きたわけではありません。今まで積み重ねてきたことを、これからも続けていくのみですし、インパクトのある調査報道を心がけたいと考えています。

(注)原題は「The Deadly Choices at Memorial」。シェリー・フィンク記者は、ハリケーン・カトリーナがニューオリンズを直撃した2005年8月29日から、病院が絶望的な状況に陥っていく数日間の様子を、長編記事としてドキュメントタッチで描いている。停電と断水で悲惨な環境におかれ、治療が完全にストップして弱っていく患者たち。死を目前にした患者たちに対して「究極の選択」を迫られる医師、看護師たちの心の動きや葛藤、判断を下す様子を、多数の病院関係者の取材、証言を通して表現している。


プロパブリカ(ProPublca)
2007年に設立された、非営利のオンラインメディア。ウォールストリートジャーナルの元編集長ポール・シュタイガー氏が編集長を務める。調査報道を専門に、32人の専属記者を抱える。ウェブサイトほか、ソーシャルメディアやポッドキャストを活用する一方、大手メディアを通じて記事を配信している。編集部は米ニューヨーク・マンハッタン。

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