警視庁が摘発した霊能団体「ロマゾフィー協会」主宰の夫婦は、風変わりなショーの動画をホームページで公開していた。そこには、夫が妻の乳房を踏み付ける猟奇的なシーンも…。一体何が目的だったのか。
「戦闘ヒロインレジェンド1 ルーサ第1章 勇者の誓い 予告編」
会員は20~50代の女性を中心に40人ほど
ロマゾフィー協会のホームページにあった動画の1つには、こんな長いタイトルが付けられている。
ミニ映画と称する3分弱の動画は、協会代表の平岩浩二容疑者(49)と妻で副代表の司容疑者(36)らの前で、まず若い男性が「俺、就職します」と宣言する場面から始まる。それが、なぜか、日光ルーサと名乗る司容疑者が、SM風の仮面を付けて「変身」する場面に変わるのだ。
そして、浩二容疑者と格闘を演じた後、司容疑者が床に横たわると、いきなり乳房を足で踏みつけられて…。
ホームページ上には、このほか、風変わりな動画がいくつかある。
日光ルーサこと司容疑者が、白いシャツとスカート姿でリングに登場し、踊りまくるダンスの動画や、司容疑者と別の女性がリングの中で格闘を演じる動画などだ。
報道によると、浩二容疑者らは、住み込んでいた内弟子のアルバイト女性(44)の尻を木の棒で数十回も叩き、2週間のけがをさせた傷害の疑いで逮捕された。「家事ができていない」と難癖を付け、しつけと称して暴力を振るっていた。協会の会員は、20~50代の女性を中心に40人ほどおり、日常的に暴力を振るったり、難癖をつけては金品などを要求したりしていた疑いもあるという。
奇抜な動画は、活動にどう役立てていたのか。
被害者の会の代理人をしている酒井洋一弁護士は、取材に対し、こう説明する。
SMではなくプロレス趣味がきっかけ?
「SMっぽいと言われますが、性的な暴行などについては聞いていません。また、そうした性的な意図もないと思います。平岩浩二容疑者は、実はプロレスを趣味にしています。その趣味にかこつけてプロレス興行のようなセミナーを開き、人集めをしようと思ったのではないでしょうか」
確かに、浩二容疑者のサイトには、プロレスについてのうんちくが頻繁に書き込まれている。「プロレスを観戦することには、霊的な意味があると繰り返し言っていたそうです。そして、会員を興行によく連れて行っていたと聞いています」
司容疑者は、自らのブログなどで、演劇やダンスへの思い入れを語っており、教室も開いていた。酒井洋一弁護士は、「ダンスの動画をいくつも公開していたのは、教義の中で何か意味があるのかもしれません」と言う。
ロマゾフィー協会のサイトによると、教義は、ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーの人智学を発展させた霊的な思想だという。浩二容疑者は、霊界でシュタイナーと交流があり、その語らなかった事実を元に2002年春に協会を始めたと主張している。
ところが、被害者の会によると、実態は、暴力や恐喝まがいの金品要求の繰り返しだったという。中には、約3000万円も取られたという男性元会員(52)もいた。入会の動機については、もともと霊的な興味があり、浩二容疑者の著作物を読んでセミナーに参加したことなどだった。テレビの霊能番組からの影響は、特に聞いていないとしている。