専決処分連発などで話題の鹿児島県阿久根市の竹原信一市長に対し、解職請求(リコール)を求める署名が有権者の過半数集まった。竹原市長について「一転低姿勢に」との報道も出始めたが、「市長の強気に変化はない」との指摘もある。
「阿久根市長、一転低姿勢 反省の弁も」「署名の多さに衝撃」。2010年9月16日、朝日新聞は電子版(マイタウン鹿児島)でこんな見出しの記事を配信した。15日のリコール署名提出を受けた市長会見の模様などを伝えたものだ。
「不徳を原因とする部分あったかも」
竹原市長のリコール運動を進めていた市民団体は9月15日、有権者(約1万9900人)の約52%となる1万364人分の署名を市選挙管理委員会へ提出した。必要数である有権者の3分の1(約6650人)を大きく上回った。
今後、審査などを経て年内にも解職の是非を問う住民投票がある。解職賛成が有効投票の過半数なら出直し市長選となる。単純に今回の署名者全員が住民投票で解職に賛成すれば、市長失職、出直し市長選へとつながる。
竹原市長は15日の会見で、「市政に関する説明不足や、私自身の不徳を原因とする部分があったかもしれない、と反省しています」と語った。さらに昨09年11月のブログで「障がい者の出生を否定している」と批判が上がったことについて、誤解を招いたとして「申し訳ありませんでした」と今になって謝罪した。09年末に障がい者団体と面会した際には、表現の修正の方針には応じたが謝罪は拒否していた。
10年9月15日の市長会見を受け、朝日新聞は「批判を受け付けないこれまでの態度から打って変わり」「これまで聞かれなかったような反省の言葉を述べた」などと報じた。リコール署名の数の多さが市長に「衝撃」を与えたというわけだ。
「リコール署名が過半数」を受け、竹原市長は弱気になってきたのだろうか。ところが、「私は最後の1日まで役所、議会、そして新聞記者の既得権益と闘う」という竹原市長「激白」記事が、週刊ポスト(9月24日号、首都圏などでは13日発売)に載っている。ポスト記事の取材日は不明だが、リコール署名が必要数の3分の1を大きく上回っていることは8月25日の段階で公表されている。「9月15日の署名数を見て急に弱気になった」説には疑問もわく。
「頼まれて名前書いただけの人も」と市長派の市議
また、竹原市長は9月15日のブログでもリコール署名について触れているが、「不徳」として挙げたのは障がい者関連ブログについてだけだ。これまでに物議をかもした対市議会の専決処分連発などについては触れておらず、該当ブログ問題以外は「反省」していないとも読める。
議会では少数派の市長派、石澤正彰市議は「市長の強気の姿勢は変わっていない」と解説する。「過半数」の署名については、「争いごとを避け、頼まれればいやと言えない人が多い地方なんです」「仮に住民投票になっても市長解職に賛成する気はない、と署名集めの人に告げても『それでいいからとにかく名前だけ書いて』と言われて応じた例も少なくない」との見方を示した。
「本当に市長をやめさせたい人が署名者のうちどれだけいるのか、知れたもんじゃない」とあくまで強気の読みで、市政の実績を訴えていけば市民の理解は得られるとしている。
一方で、リコール署名簿は公開されるため、「周囲の目を気にして、署名したくてもできなかった人も多数いる」との指摘もある。
08年夏に初当選した竹原市長は09年、市議会からの2度の不信任決議を受け5月に出直し市長選に臨んだ。2人が立候補し、竹原市長は8449票対7887票で競り勝った。投票率は約82.6%だった。