政府・日本銀行は2010年9月15日午前10時半すぎ、円を売る為替介入を実施した。東京外国為替市場のドル円相場は、前日終値で83円05円を付け、ロンドン市場では82円台に突入する円高基調だったが一変し、15日午後には1ドル85円台まで値下がりした。介入の規模は1兆円超と大規模なものとなったようだ。
政府・日銀は、東京市場に続いて開いたロンドン市場でも円買い介入に踏み切っていて、米ニューヨーク市場での介入の可能性もある。
為替介入、規模1兆円超か?
企業経営者にとっては、「ようやく」といった感じだろう。9月13日に日本経団連の米倉弘昌会長が定例の記者会見で「これ以上の円高になるようなら、為替介入をして頂きたい」と発言。同日のドル円相場は83円68銭だった。
為替介入は「80円を割ったとき」と予測するエコノミストが少なくなかったが、民主党代表選が終わったことで「政府が動きやすくなった」(FX関係者)こともあり、「83円」での円売り介入となった。
9月15日、仙谷由人官房長官は記者会見で、1ドル83円を割り込んで円高が進みはじめたことが介入のきっかけになったことをほのめかしている。
東京市場への介入規模は、金融当局関係者の「かなり大きい」との発言から、1兆円超とみられる。最近では2004年1月9日に1兆6664億円の円売り介入があったが、「そのくらいかもしれない」(銀行関係者)とみている。
ポイントは協調介入できるか
今回の円売り介入は、株価の急上昇などをみれば、まずは成果があったといえる。しかし、エコノミストや金融関係者らに「遅すぎる」と指摘する声は少なくない。日本商工会議所の岡村正会頭は2010年9月15日の記者会見で、「適切な処置」と評価しながらも、「もう少し早く介入したら、円安方向に動いたのではないか」との感想をもらした。
日本証券業協会の前哲夫会長は、「1ドル85円が円安といえるかどうか。株式市場の活性化に役立つには、一層の円安が望ましい」と手厳しい。
FX会社の幹部や銀行関係者も、「今後2弾、3弾と断続的、追加的に介入を進める必要がある」と口を揃える。1度だけの介入では、その効果が持続的ではないと考えられているためで、「ロンドンやニューヨークへの介入を進めるべき」(銀行関係者)との声や、「今後の一週間の日銀の動きを注視したい」(FX会社の幹部)と話している。
ただ、2度、3度と為替介入しても、なお円高リスクは払拭できそうにないようだ。第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏は「ポイントは協調介入にある。今後も協調介入への理解が得られないことになると、過去の経緯をみても円安方向への基調を変えるような効果は期待しがたい」という。
欧米などで再び景気が減速しはじめ、それによる円高圧力が増大してくれば、再度の介入もあるだろうが、「介入を繰り返していくことは技術的に可能だが、回数が増えるにつれて効果も効き目が薄れて、一段の円高リスクが高まるだろう」とみている。