国会議員としてロンドン五輪を目指すと宣言している谷亮子選手(35)がピンチだ。五輪出場には、2010年11月に行われる講道館杯で結果を残さなければならないが、参議院議員に当選以降ほとんど練習ができない状況が続いている。加えて、若手がすっかり実力をつけている。「出場はあきらめろ!」という意見がネットや日本柔道関係者から一層増えることになった。
48キロ級では浅見、福見選手が台頭
谷選手は2010年9月14日、報道陣のインタビューに、民主党代表選のため2週間は練習ができていないなどと明かしたものの、11月に行われる講道館杯については、早く柔道選手としてのスイッチを入れたいとし、改めて競技再開への意欲を滲ませた。
しかし、国会議員と柔道選手の2足のわらじは無理ではないか、という見方は根強い。2008年の北京オリンピックでは3大会連続のメダルだったが、公約した金ではなく銅。力の衰えを指摘する声も多かった。
谷選手は二児の母でありプロ野球選手の妻。北京五輪以降は出産や育児、選挙活動などで柔道に関わることがめっきり減った。2010年7月の参院議員選挙で当選したときには、全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長(59)が、
「両立できないなら現役から身を引いたほうがいい」
と引退勧告とも取れる発言をした。
そうした中、東京で2010年9月に開催された柔道世界選手権。日本は男女計16階級で10階級を制しメダル数は23個の大活躍となった。特に女子柔道の躍進がめざましく、谷選手の階級48キロ級では、浅見八瑠奈選手(22)と福見友子選手(25)が決勝に進み金と銀のメダルを獲得した。
「48キロ級で谷さんの入るスキはもうない」
バルセロナ五輪銀メダリストでプロレスラーの小川直也さん(42)は、10年9月14日付け「東京スポーツ」のコラムで、「48キロ級で谷さんの入るスキはもうない」と言い切った。谷選手が北京五輪で敗れたルーマニアのドゥミトル選手に浅見選手は一本勝ち。浅見選手と福見選手はしっかり組む柔道をして勝っているが、谷選手の場合は組まない柔道という点でも「時代が変わった」と感じているというのだ。
ネットでも谷選手は現役を退くべきだという意見が大半を占めている。48キロ級の「ポスト谷」は浅見選手か福見選手だと見られている。
「谷さんは日本柔道界の貢献者ですが、現役で居つづけるため後進が育ちにくい、といったことが起こっています。国会議員はいい花道だと思うのでそちらで頑張って欲しい」
連盟関係者がこう話すように、引退を求めている人が増えている状況を谷選手はどう感じているのだろうか。参議院議員事務所に問い合わせようとしたが、2010年9月15日、事務所の電話は一日中留守電だった。