菅直人首相(63)は、党員やサポーターらの支持をバックに民主党代表選で再選した。ただ、このまま小沢一郎前幹事長(68)との溝を埋めないと、党が分裂して墓穴を掘る可能性もある。どうするのか。
当初は、国会議員の間では、小沢氏の優勢も伝えられた。しかし、結果として、菅氏が412対400のポイント差で議員票も制した。
「新しい空気を吸い、最近は顔色もよく」
党員・サポーター票249、地方議員票60のポイントを稼いだ菅氏は、結果として、それぞれ51、40ポイントだった小沢氏を圧倒した。
なぜ菅氏が、僅差とはいえ、国会議員票を上回ったかの理由は、はっきりしない。しかし、新聞各紙の世論調査でも、菅氏がリードしており、「世論の風」が影響した可能性がありそうだ。
菅氏に一票を入れた井戸正枝衆院議員は、取材に対し、「議員票は劣勢と言われてきましたが、14日間の選挙戦を通じて訴えが浸透したのだと思います」と話す。政権当初は、精彩のない表情が指摘された菅氏だが、井戸氏は、「いろいろな意見を聞いて、新しい空気を吸ったので、最近は顔色もよくなったと思います」と言う。
小沢氏には、選挙戦中に青木愛議員とのスキャンダルもあったが、井戸氏は、「それは選挙結果に関係ないと思います」と言っている。
人事「現時点では、まったくの白紙」
一方、小沢ガールズこと田中美絵子衆院議員は、取材に対し、涙目になりながら、「非常に残念な結果です」と答えた。スキャンダルの影響については、「どうなんでしょうか。事実かどうかも分かりませんし、報道に気づいている人もあまりいなかったのでは。私は、影響はなかったと思っています」とした。
小沢一郎氏が冷遇される可能性については、「処遇は、執行部が決めることですが、小沢さんの豊富な実績を考慮に入れてほしい」と言う。そのうえで、「これまでに党が割れたことはありませんし、挙党一致で行けると思います」と断言した。
再選後の記者会見で、菅直人氏は、小沢氏などの処遇を聞かれ、「現時点では、まったくの白紙です」と述べ、2010年9月15日にも党幹部らの意見を聞く考えを示した。小沢氏の評価についても、「いろいろ政策的な議論を交わす中で、改めて小沢さんの見識の深さを感じました」と明かしただけだった。
ただ、小沢外しで人気となった菅氏だけに、挙党一致を演出すると人気がガタ落ちする危険がある。かといって、小沢氏を冷遇すれば、党内に亀裂が入りかねないジレンマがある。菅氏の今後を占うカギは、再選後の人事となりそうだ。