アダルトサイトと同名だったため、校名変更に追い込まれた「さくらんぼ小学校」だが、ここにきて替えなくていいのではないか、という意見が山形県東根市の教育委員会に多数寄せられている。
「さくらんぼ小学校」は2011年4月に東根市が新設する公立小学校。名称は一般公募し、215点の候補の中から一番多かった「さくらんぼ小学校」が09年12月に市議会で承認された。
名称に対し毎日数十通の電話やメール
しかし、2010年8月上旬にアダルトゲームを扱っているサイト「私立さくらんぼ小学校」がある、というので問題化した。土田正剛市長は一旦名称の変更はしない、としたものの9月9日に一転して校名を変更すると発表した。
新設小学校と同じ名前のアダルトゲームサイトが見つかった当初、東根市は「公募で決まった名前であり、東根市はさくらんぼ生産量日本一、市を象徴する名前のため変更はない」としてきた。しかし、このアダルトゲームサイトは「幼女」を思わせるわいせつな画像が多数掲載されている。子供がそれを知ってサイトを見るようになったら困る、サイトのファンの男性が小学校に詰めかけるのではないか、といった不安の声が市に寄せられ、土田市長は校名変更に踏み切った。
アダルトゲームサイトサイト運営者は今回の騒動を知り、「子どもや保護者の方々を不安にしてまで名称を貫こうとは思わない」とサイト上で9月9日に名称変更の検討を表明したが、市長は、サイトの名前が変わったとしても小学校の名前の変更を行うとした。
そうしたなか、「名前を変える必要はない」という意見もネット上などで多数出ている。東根市教育委員会によると、マスコミ報道されネットで話題になった9月8日以降、電話やメールで数十件の意見が毎日のように教育委員会に寄せられている。初めは子供達のためにすぐに名称を変更せよ、というものが多かったが、変更発表後は「なぜだ」という意見が多数寄せられるようになった。「公募で選んで決定したことだから」「さくらんぼはもともと東根市の歴史的な産物だ」などが理由だという。
山形出身の作曲家も「堂々と名乗ればいい」
「さくらんぼ小学校」の校歌を作詞作曲した山形出身の作曲家、服部公一さん(77)は、10年9月10日付けの朝日新聞のインタビューで、
「堂々と名乗ればいい。街のシンボルとしてすばらしい名前なんだから」
と答えている。そのほかにも同紙には、小学校が東京歌舞伎町のような繁華街にあるならまだしも、田園風景が広がる地域にあるなら心配する必要はない、といった専門家の意見も掲載されている。
ただし、こうした反対意見が出ているにもかかわらず名称変更の作業が進んでいて、公募名の中から新たにピックアップし新名称を検討している最中だ。
もっとも、もともと「さくらんぼ小学校」の名前について学校現場では異論を唱える人が多かった。それは、東根市の駅名が「さくらんぼ東根」、マラソンの名前が「さくらんぼマラソン」といった具合にさくらんぼの名前ばかりで「またか」「芸がない」といった意見や、いくらなんでも公立学校の名前が果物というのは変だ、という見方が出ていたからだ。
ただ、アダルトゲームサイトの問題が出たときには、そうした分野に「さくらんぼ」が使われるのは普通のこととし、気にする教職員はいなかった。それが一転変更に。教職員の間ではしらけムードが広がっているそうだ。