民主党代表選に関する世論調査で、新聞・テレビでは菅直人首相が優勢なのに対し、インターネットでは小沢一郎氏が圧倒的と逆転現象が起こっている。結果を出せない菅首相よりも、小沢氏の「強い指導力」が支持されていると見る向きもあるが、小沢氏のネット人気はなぜなのか。
2010年9月14日に投開票が行われる民主党代表選について、メディア各社が世論調査を実施している。
大手メディアでは菅首相圧勝
読売新聞が5日に発表した調査では、次の代表に小沢氏がふさわしいいと思う人が18%だったのに対し、菅首相は66%。6日に発表されたテレビ朝日の調査でも、小沢氏が17%に対し菅首相は60%と、菅首相が優勢となっている。
しかし、ネット上では事情が変わってくる。ヤフーの「みんなの政治」が9月1日から始めたまったアンケートで、12日現在小沢氏支持が63% で、菅首相の25%を圧倒。小沢氏は4日にニコニコ生放送に生出演し、番組最後に行われた調査では小沢氏が約78.5%、菅氏が約21.5%だった。スポニチが8月26~27日にかけネット上で行った世論調査でも、約80%が小沢氏を支持している。
同紙の「菅首相より小沢新首相 サイト調査で圧倒8割」(8月28日付け)という記事の中で、政治評論家の浅川博忠さんは「消費税発言など菅氏の軽さぶりに有権者が見切りをつけた。その分安定感と強い指導力がある小沢氏への期待感につながったのでは」と分析している。
一方、ネットでの小沢氏支持が広がっていることに関して、経済学者の池田信夫さんがJB PRESSに「ネットで盛り上がる『小沢ブーム』は危険な兆候か 大手メディアとネットで分かれる小沢支持率」(9月8日付け)という記事を寄稿している。
単純にキャラクターを面白がっているだけ?
ネット投票でのサンプルの偏りを指摘しつつも、ニコニコ動画などで小沢氏に触れた「若い世代」は、「意志が強く指導力のありそうな小沢氏に好感を持つ視聴者が多いのだろう」と分析。更に、鳩山・菅内閣で行われてきた政策があまりに無策で、経済も全く改善していないという不満を持っている、と見る。
こうした中で「日本経済が行き詰まってヒトラーのような『強い指導者』を求め始めたのではないか」といった見方も出ているという。
一方で、ある政治評論家は「別に『強い指導者』と求めているのではなく、『ぶつぶつ言っている菅よりも、どっしりした小沢を支持しようぜ!』と単純にキャラクターを面白がっているだけでは」と語る。
麻生太郎元首相のときも同様で、ネットで人気があると言われていたものの、06年の自民党総裁選で安倍晋三元首相に敗れ、09年の衆院選でも大敗を喫した。
そもそも新聞の世論調査とネットの調査は別物だ。新聞の世論調査では、原則的には無作為に調査対象を選んでいるが、ネットでは自由に投票をできるほか、IDを変えて何回も投票ができる場合もある。そのため、少数派の意見が大きく反映しがちだ。ヤフー「みんなの政治」の担当者も「あくまでIDを登録して投票している、政治に関心の高いユーザーの方々の意見です。統計調査とは違うので、報道機関がやっている調査と比べられるようなものではありません」と話す。
前出の政治評論家は、
「大手紙の調査では、菅さんが6~7割で小沢さんが2~3割と大体どこも同じ結果が出ていますよね。ネットで高い支持率が出ていることは、大手紙で人気のない小沢さんにとっては『利用したい数字』なのかも知れませんが、実際の選挙戦に影響があるかは微妙なところです」
と語っている。