福岡県警は公式サイトで、暴力団と親密な交際があると認定した「下請け業者」の実名を公表した。県警から通報を受けた福岡県も、サイトで同社の実名を出し、県の公共工事からの「排除措置」をとったことを明かした。国土交通省関係者は「暴力団対策で、いわゆる下請け業者の実名公表は、恐らく全国初ではないか」と話している。
福岡県警は2010年9月9日、北九州市小倉南区の建設会社「ダイリン」について、役員等が「暴力的組織又は構成員等と密接な交際を有し、又は社会的に非難される関係を有している(略)」と認定し、県へ通報したとサイトで公表した。
福岡県発注工事から排除する方針
これを受け、福岡県も9月10日、サイトで同社の名前を挙げ、当面6か月間、県発注工事から排除する方針を明らかにした。元請け業者に該当会社との契約解除を求め、応じない場合は元請け業者と県の契約を解除する。県サイトでの表題は「暴力団関係事業者に対する指名停止措置等一覧表」となっている。
名指しされた会社はどう受け止めるのだろうか。同社代表番号にかけると、電話にでた人物が「記者、報道の対応はしてない」と答えた。
いわゆる元請け(工事入札参加資格名簿に登載されている業者)については、これまでも暴力団との関係を警察から指摘された会社に関して、福岡県は会社名をサイトで公表し、指名停止措置にした旨明かしていた。「元請け」の企業名公表は、福岡県だけではなく、例えば国交省九州地方整備局のサイトなどでも行っている。
今回の取り組みは、この公表範囲を「下請け」(参加資格名簿に登載されていない業者)にまで広げたことになる。
導入には慎重な自治体も出る?
福岡県警としても、自治体へ該当会社を通報してから自治体による発表までに時間がかかる場合があるため、その間に他自治体の工事に該当会社が下請けに入ることを防ぐ意味もあり、県警サイトでいち早く公表することにした。
福岡県財産活用課によると、会社名公表の「下請け」への拡大は、2010年8月に工事請負契約条項を改定したことを受けた措置だという。同県では、県暴力団排除条例が4月に施行されるなど暴力団対策が進んでいる。
全国暴力追放運動推進センター(東京)の担当者は「全国に広がってほしい取り組みだ」と評価した。一方、国土交通省のある担当者は、「下請け会社名の公表、排除措置」について、「元請けと下請けとの契約は、民間対民間なので、行政側は直接踏み込めない、という発想もある」と指摘し、「積極的だと評価する声もあるだろうし、導入には慎重な自治体も出るだろう」と話した。
別の国交省担当者は、福岡県には、全国で22団体ある指定暴力団のうち、福岡県には最多の5団体があることが、地元の積極的な取り組みの背景にある可能性を指摘した。ちなみに「2位」は4団体の東京だ。福岡県の担当者は、「指定暴力団が県内に多いことは意識しており、積極的に対策を進めたい」と話している。