LCC市場競争、さらに激化 ANAが参入を正式発表

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   ここ数年で海外LCC(格安航空会社)の日本進出が相次いでいることを受けて、国内航空会社も対抗策を打ち出し始めた。以前からLCC参入の姿勢を示してきた全日空(ANA)が、LCC参入を正式発表。ANAとは別ブランドで、2011年下期の就航を目指す。「圧倒的低コスト構造のビジネスモデルを構築する」と意気込みを語った。

東京-大阪片道5000円程度の見込み

ANAは、LCCの別ブランドを立ちあげる方針だ
ANAは、LCCの別ブランドを立ちあげる方針だ

   ANAは2010年6月の株主総会でLCC設立の意向を表明しており、9月9日設立計画を正式に発表した。香港の著名投資家、ビクター・チュー氏が率いる投資会社「ファーストイースタン投資グループ」(FE)の出資を仰ぎ、10年末に関西国際空港を拠点に新会社を設立。ANAを含む国内投資家が66.7%、FEが33.3%出資する。国内線、国際線ともに、11年度下期に運航開始を目指す。

   先行する海外のLCCと同様、運航する機種を1機種にしぼって整備コストを削減し、機内の座席数を増やしたり、サービスを有料化したりするなどして利幅を増やす。国内線の運賃については「他航空機関(鉄道、高速バス)を意識した価格設定による航空需要の拡大」と、高速バスと価格競争することを明確にうたっており、運賃は東京-大阪で片道5000円程度になるものとみられている。

   また、既存のANAブランドへの影響を避けるため、LCCはANAとは別ブランドにし、事業運営もANAとは切り離す。

   大手航空会社がLCCを設立した例としては、豪カンタス航空の完全子会社のジェットスター航空が有名だ。04年に設立されたジェットスター航空は、現在は世界中17か国で、98路線を運航。設立から一貫して黒字経営で、10年6月期の決算では、前年度比22%増の1億3100万豪ドル(101億円)の営業利益を計上している。粗利益ベースでは、アジア最大のLCCだ。

   親会社のカンタス航空も、ビジネスクラスの需要が底打ちしたことから、前年度は400万豪ドル(3億円)だった営業利益が6700万豪ドル(52億円)に急増している。

   いわば、この二つのブランドが共存共栄している形で、この理由を、カンタスでは

「フルサービスのカンタス、低運賃のジェットスターというグループ内の2つのブランドが、異なる市場区分で競争した」
「ブランドを高度に分けたことで、違った顧客層に訴求できた」

などと分析している。

カンタス、JALに支援を表明

   なお、カンタスは、会社更生手続き中の日本航空(JAL)と同じ「ワンワールド」陣営だ。JALがデルタ航空主導の「スカイチーム」移籍を取りざたされ、会社更生手続きを申請する直前の10年1月12日には、カンタス幹部が都内で開かれた会見で

「JALがLCCを設立するなら、カンタスのノウハウを提供する。日本はLCCの分野では、世界で最も遅れている」

と、JALに対する支援を表明している。JALも、8月31日東京地裁に提出した更生計画案の中で「設立を検討する」と明記している。ただし、この日会見した大西賢社長は、

「研究を進めた上で判断したい」

と、現段階では慎重な言い回しに終始している。

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