「パフォーマンスといわれてしまう」
イメージ先行、しっかりとした制度なしで見切り発射するのは民主党のお家芸。「新成長戦略実現会議」もそうした運命を背負っている。しかも、この時期のスタートだ。小沢氏が代表になったらどうなるかわからない。
ただ、かつての経済財政諮問会議と同様に、日銀総裁をメンバーとしているのは評価できる。これまで、総理と日銀総裁が会うことすらスムーズでなかったのは問題だった。
ここは、大いに経済問題を議論してもらいたい。気に掛かるのは、日銀のスタンスだ。9日の日銀総裁の挨拶は、需要を作るのは政府の役割であって金融政策には限界がある旨の話だった。日銀は、低金利なのでこれ以上の金融緩和はできないという。マスコミなどはそうした言い分を信じているが、経済にとって重要なのは名目金利ではなく実質金利(名目金利-予想物価上昇率)だ。日銀は名目金利が低いといっているが、金融政策のスタンスによって予想物価上昇率が変化するのは実証されているので、実質金利を下げられる。
日銀の役目は、実質金利を下げて設備投資を促し、円高を是正し、国内に雇用環境を作ることだ。今の円高の9割の責任は日銀であるというデータもある。折角の会議であるので、日銀にもその役割をしっかりとってもらいたい。そうでないと、菅政権のパフォーマンスといわれてしまう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。