政府が国内産業をリードしていく それが成長のポイントだ
/経済産業省の近藤洋介政務官に聞く

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   政府は近く、菅直人首相を議長とする「新成長戦略実現会議」の初会合を開く。2010年6月に決定した新成長戦略(メモ参照)に盛り込まれた「法人実効税率の主要国並みへの引き下げ」などに期待が高まる一方、「産業育成政策は時代遅れ」といった批判もある。新成長戦略のポイントを、経済産業省の近藤洋介政務官に聞いた。

それぞれの分野で達成すべき数値目標を示した

近藤洋介・経済産業省政務官
「普通の議論の中では、大筋これ(新成長戦略)が良い、という評価かな。勿論実行することが大切です」と話す近藤洋介・経済産業省政務官

――政府の成長戦略に対しては、これまでも「かけ声だけ」「機能しなかった」などと批判が出ていました。今回の新成長戦略が、以前のものとは違う点をひとつだけ挙げて下さい。

近藤 具体的な数値目標を出したという点です。それぞれの分野で、2020年までに達成すべき数値目標を示し、達成に向けた取り組みの工程表も決めました。旧政権下の成長戦略は、作文をつぎはぎしただけで、ここまで数字を明示したものはありませんでした。

――産業政策(特定産業分野へ予算を重点配分する等)については、そもそも「時代遅れ」「不要だ」との指摘もあります。政府は、教育分野での人材育成や規制緩和に力を注ぐべきだ、という主張です。

近藤 むしろ、そうした批判の方が時代遅れだと思います。政府は産業政策に関与せず、規制緩和だけを進めていれば後は自由市場がうまくやってくれる、というのは小泉政権時代の発想です。それは結果として失敗し、今の日本の厳しい状況があるわけです。局面によっては政府が産業をリードしていく、という姿勢の方が、力がある企業が集まる国々の間ではスタンダードになっています。
 例えば韓国では、サムスン電子が凄まじい高収益を上げるなどしています。為替の影響もありますが、背景としては1997年のアジア通貨危機を機に政府主導で分野ごとに企業を集約した、ということがあります。こうした政府関与の結果、サムスン電子などが強くなり韓国経済を引っ張っています。アメリカでも、オバマ政権がグリーン・ニューディール政策で環境・エネルギー分野での産業政策を進めています。また、フランス政府は原発などの海外商談で企業と力を合わせています。

首相替わっても中身はそれほど動かない

――9月14日投開票の民主党代表選の結果次第で、新成長戦略の中身が変わる可能性はありませんか。

近藤 仮にまた自民党政権に戻る、などという事態になれば中身は変わることはあるでしょう。しかし、民主党内で首相が替わっても内容はそんなに動かないのが大原則です。ただ、部分的には変わりうる話だとも思います。
 今回立候補している小沢(一郎・前幹事長)さんについて言えば、6月の新成長戦略は、鳩山(由紀夫)首相・小沢幹事長時代に基本方針をつくったものです。その点からしても、仮に小沢さんが代表・首相になったとしても、そんなに大きく変わる性質のものではないでしょう。

――新成長戦略は、実現に向けてすでに動き始めているのでしょうか。

近藤 今(9)月9日に発足する「新成長戦略実現会議」は、菅首相を議長に日銀総裁、経済閣僚、経済界、労働界、学識者などで構成される予定です。戦略実行を推進する舞台装置が立ち上がるわけです。日本の経済はいま、土俵際です。どう建て直すか、危機感をもって新成長戦略の実行に取り組みたいと思います。

<メモ:新成長戦略>政府が2010年6月18日に閣議決定した、20年度までの経済政策集。7戦略分野のうち、「環境・エネルギー」「健康」などの4分野で123兆円の需要と499万人の雇用の創出を目標に掲げている。また、「法人実効税率引き下げとアジア拠点化」「幼保一体化等」など特に経済成長に寄与する21の施策を「国家戦略プロジェクト」と位置付け優先的に取り組む。デフレ脱却に向け、消費者物価上昇率を11年度中にプラスに転換する目標も明記している。


近藤洋介さん プロフィール

こんどう ようすけ 1965年生まれ。現在、衆院議員(山形2区)、経済産業省政務官。慶応大学法学部卒業後、日本経済新聞社に入社し、経済部記者などを務める。99年に退社し、衆院議員当選を目指す。2003年の衆院選で初当選(比例復活)し、現在3期目。

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