2010年は9月に入っても猛暑が続いている。多くの小中学校では、すでに新学期に突入しているが、全国の教室の冷房化率は1割程度。小中学生の多くは、暑さの中での授業を余儀なくされている。「学習にも影響が出る」との指摘も相次ぎ、新たにエアコンの設置に踏み切る自治体も出ている。
文部科学省の調べでは、小中学校の普通教室の冷房化率は10.2%(07年時点)と、非常に低いのが現状だ。
「この暑さは異常で、もはや『災害』だ」
「暑さ対策本部」を設けている群馬県館林市も、「エアコンを設置していない9割」の中に含まれる。同市では、9月6日には最高気温37.3度を記録し、最高気温が35度以上の「猛暑日」が計38日にも及んでいる。文科省の基準によると、夏の教室内の温度は30度以下が望ましく、最も望ましい温度は25度から28度だとされている。少なくとも、今年記録されている気温は、この基準を大きく上回るものだ。
保護者からも、エアコンの設置を求める声が続出。安楽岡一雄市長も8月26日の会見で、
「この暑さは異常で、もはや『災害』だと認識している」
として、市内のすべての小中学校16校と幼稚園7か所の全教室にエアコンを検討することを明らかにした。
設置されるエアコンは約320台で、電力を確保するための変電設備の改修を含めると5億円の費用負担が発生する見通しだ。教育委員会の教育総務課は、設置のための財源は「国の補助を活用したい」としながらも、具体的な段取りについては、「これから検討するところ」。実際に冷房化の恩恵を受けるのは、11年度以降になりそうだ。
杉並区は冷房を設置する方針に転換
首長の交代が、冷房化を後押しした自治体もある。10年7月に、山田宏前区長の後を継ぐ形で東京都杉並区長に就任した田中良氏は、選挙公約のひとつに「区立小・中学校の夏期における学習環境の改善」を掲げていた。
実は、杉並区では、「エコスクール」と呼ばれる校庭の芝生化や屋上の緑化、ひさしで日光をさえぎるなどの独自の取り組みが進んでおり、冷房化は「『エコスクール化』が終わった学校から順次進める」と、比較的優先順位が低かった。このため、杉並区は、23区では冷房化が最も遅れていた。
たが、区長交代や、「都市部の酷暑、光化学スモッグ、夏休み中の補習の増加、11年度からの新教育課程による授業数の増加」(教育委員会)を理由に、区では9月3日、区内の小中学校66校のうち、未設置だった48校についてエアコンを設置する方針を発表。事実上、前区長の政策を転換した形だ。
設置費用は1教室あたり270万円を見込んでおり、20校については11年5月までに、残り28校については11年8月末までに設置する。少なくとも半数については、来年の夏に間に合いそうだ。
また、「エアコンがあっても活用されていない」事例もある。
京都市教職員組合は9月3日、一部の小中学校で「電気代を気にして、午後にクーラーが切られた」といった例があったとして、(1)最高気温が28度以上の日には、冷房使用を制限しないように各校に指導する(2)光熱費予算を増額する、ことなどを市の教育委員会に申し入れている。
今年の猛暑が、各地の冷房化を後押しすることになりそうだ。