売れっ子茂木、勝間、池上… 「出し過ぎ」批判に反省した人

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   著名なブロガーの内田樹(たつる)さんが、本を出し過ぎたと新刊の塩漬けを宣言して、出版業界に戸惑いが広がっている。大量出版が続けば、著者が疲れて質も下がるというのが理由だ。

   この塩漬け宣言は、大手書店の店長がブログで指摘したことがきっかけだった。

内田樹神戸女学院大教授が「塩漬け宣言」

塩漬け宣言が波紋
塩漬け宣言が波紋

   この店長は、ブックファーストの埼玉・川越店の遠藤晋さん。情報サイト「一個人」のブログ「心に残った本」で2010年8月12日、遠藤さんは、売れっ子の本が大量に出回る「書店バブル」が起きていると明かした。

   遠藤さんは、脳科学者の茂木健一郎さん、経済評論家の勝間和代さんに続いて、キャスターの池上彰さんのバブルが続いていると指摘。書店バブルでは、本の作りが雑になって内容が薄くなったり、次第に人生論、精神論、さらに対談ものへと迷走したりするとした。その結果、本の質が落ち、著者まで蝕んでいくと言うのだ。

   茂木さんや勝間さんは、翌13日に早速、この見方にブログで意見を述べた。

   茂木さんは、「一冊一冊を誠心誠意作っているだけ」として、「今まで通りのやり方を変える気はない」とした。また、勝間さんも、「1人1人は真剣にそのオプションに投資をして、成功をさせようとしています」「淡々と、自分の本来価値を上げることにみなさんと協力しながら務める、それに尽きる」と言っている。

   そこに参入してきたのが、ブロガーで神戸女学院大教授の内田樹さんだ。

   内田さんは、同13日のブログで、遠藤さんの指摘が「かなりの程度まで(というか全部)私にも妥当する」とまで告白した。10年に入って共著も含め本を6冊出し、近く2冊が出るほか、校正待ちのゲラ7点、進行中の本6点などもあることを、自らバブルだと反省。以前から出版は全部断っているものの、編集者の「泣き落とし」「コネ圧力」に屈したとして、バブルを避けるためにも、出版予告した2冊を除いてゲラは塩漬けにすると宣言した。

「流通の仕組みからどこも自転車操業」

   売れっ子の本を出し過ぎという書店店長の遠藤晋さんの指摘について、出版社側はどう考えるのか。

   内田樹さんのブログで塩漬けにするとされた新刊「街場の文体論」を出版予定のミシマ社の編集者は、こう説明する。

「確かに、自転車操業で本を出している社もあると思いますが、うちは無関係だと思っています。既存の枠組みに収まらないいい本を絞って出していますので」

   塩漬け宣言については、「1年後とか先の予定ですし、まだ草稿段階なので、困ることはほとんどないですね。先生は、同じことを常々言っておられますが、いつもきちんと調整されますので、焦りもありません」と話す。内田さんはどこの出版社とも仲良くやっており、もめたところはないという。

   また、内田さんの本「村上春樹にご用心」の改定新版を出す予定のアルテスパブリッシングの代表は、この新版塩漬けについてこう言う。

「出版スケジュールを立てて進行していますので、急にストップして困るということはありません。先生のびっしりなスケジュールから時間がかかるのは承知していますので、慌てていることもないです。内容のない本ではなく、いい本をちゃんと作れという先生のメッセージと受け止めています」

   本の出し過ぎについては、「苦しさの程度は違いますが、流通の仕組みからどこも自転車操業ですよ。うちは内田先生頼みということは全然ありませんが、今まで以上に心して作ろうと考えています」と明かす。

   内田さんの本を出したほかの出版社に聞いても、「うちは本の出し過ぎという感じではない」とのことだった。

   内田さんが本を出し過ぎかどうかは定かではなかったが、この出版不況で自転車操業のところも多いのは事実のようだ。

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