富士山に登った登山者が2010年8月28日、過去30年でもっとも多い25万人を超え、一種のブームになっている。山梨県側から6合目で登山者を24時間体制でカウントしている富士山安全指導センターによると、8月31日午後2時の時点で25万8000人の登山者を記録した。
そんな中、24時間以内に4回富士山に登るという「無謀」な挑戦をするアメリカ人たちがいる。
たった2時間半で山頂目指す
「4 in 24 Fuji Challenge」と名付けられ、米海軍横須賀基地にある第7潜水艦群に所属するデイビッド・ビームさんが、同じ基地に勤務する3人の仲間たちと実行する。
予定では9月4日午前3時に、最も一般的な登山道「河口湖口ルート」の5合目(標高2305m)に入り、3時半から第1回の登頂を始める。メンバーたちは、(1)5合目から山頂まで平均2時間半をかけて登り、(2)約10分の休憩、(3)約1時間20分で5合目まで下山、(4)30~45分休憩をしたら再び山頂に向かう、という時間配分を目標にしながら、徐々にペースを落としていく。
ちなみに、やまなし観光推進機構が運営している「富士の国やまなし観光ネット」の情報によると、同ルートの所要時間は山小屋での休憩を挟みながら、登り約6時間、下り約3時間20分としている。単純計算すると普通の人の2.4倍のスピードで登ることになる。
富士登山を甘く見ているのではなく、チャレンジに向けて過酷なトレーニングを積んできた。まず、決心を固めた1年前から「クロスフィット」という、特殊部隊でも採用される体力・持久力・敏しょう性などを総合的に鍛えるトレーニングを始めた。5月からは舗装された道ではなく野山を駆け巡る「トレイルラン」をメニューに加えた。さらに7月に富士山が登山シーズンに入ってからは、一般登山者のボランティアガイドとして、2カ月で12回も登頂を果たした。
負傷兵士支援するチャリティーも行う
実は、過去にも横須賀基地に勤務する米軍兵士たちが「4 in 24」、一日4回登頂を成し遂げている。挑戦が始まったのは2007年。2人が24時間以内に3回の登頂を目指して成功した。翌08年には今と同じ4回に目標を高く設定した上で5人が挑戦し、21時間59分で成し遂げた。ところが09年はメンバーが1人に減少。さらに天候不良の影響で目標達成とはならなかった。10年は過去3年で挑戦したメンバーが全員帰国し、計画自体が頓挫しかけたが、「この伝統をなくしてはならない」と、09年の挑戦者の親友だったビームさんが立ち上がり仲間を集めた。今回はチーム全員が初参加だ。
挑戦の模様はホームページ(http://fujicharity.com/)で報告される。また毎年、挑戦者たちがチャリティーを呼びかけており、ビームさんは1万ドルを目指している。8月30日夜の時点で3600ドルが集まったという。集まった募金は、イラクやアフガニスタンで負傷した米軍兵士たちを支援するNPOへ贈る。
ビームさんに不安はないか聞いたところ、「一番の不安は睡魔との闘いだ」と答えた。また、妻のジェニファーさんは、体力的に過酷なこの挑戦について、「どうかしている」とあきれ顔だが、趣旨には賛同し全員の無事と成功を祈っている。