民主党代表選の対決の構図がすったもんだのあげく、ようやく固まった。しかし、直前に「トロイカ3人衆」による「密室談合」で対立回避をめざす動きが出るなど旧来型の政治手法を見せつけられた形だ。菅直人首相、小沢一郎前幹事長、鳩山由紀夫前首相のトロイカ組に対し、「過去の人。世代交代を」と求める声も出ている。
2010年9月1日、民主党代表選が告示され、菅首相(63)と小沢氏(68)が立候補した。2人は8月31日夕、2者会談をした後、それぞれ改めて記者会見で立候補すると発表した。
「若手にどんどん出てきてもらいたい」
8月30日から31日にかけては、「トロイカ体制(+1)重視」の旗印のもとに、鳩山氏(63)が「仲介役」として動き、小沢氏の立候補見送りの可能性を模索する動きが出ていた。しかし、小沢氏復権に向けた「ポスト」を巡る対立から菅首相と決裂した。「+1」は、輿石東参院議員会長(74)のことをさす。
「いずれも過去の人達である。今や世代交代が必要なのに民主党の中堅若手は一体何をしているのか」。ジャーナリストの田原総一朗さんは8月31日夜、ツイッター(Twitter)でこうつぶやいた。「トロイカ+1」に対する批判だ。
「民主党の若手にきっと素晴らしい議員いるわけだから、どんどん出てきてもらいたい」。テリー伊藤さんは9月1日、情報番組「スッキリ!!」(日本テレビ系)で代表選についてこう感想をもらした。菅首相か小沢氏か、の選択肢しかないことについて「国民にとって不幸」なことだとも指摘した。田原さんと同じく、トロイカ組世代ではなく中堅若手に期待したい、という思いのようだ。
こうした指摘が今回出たのは、何も単純に年齢や議員歴だけが問題視されているから、というわけではなさそうだ。例えば、8月31日に菅首相と小沢氏の2人がそれぞれ会見で語った様子や内容は、いずれも元気がなく、党内の内向きの話だった。事実上新しい日本の首相を決める代表選なのに、夢も希望も感じさせない話しっぷり、といっていいくらい魅力に欠けた。
「内側にこもった自分視点でしか話していない」
「2人のスピーチは、話し下手(とかいう)以前にビジョンを言わず、日本のことを何も言っていない。永田町の身内の話だけ。あきれるとしか言いようがない」
9月1日の情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)にコメンテーターとして出演したデーブ・スペクターさんは、前日の菅・小沢会見についてこう不満をもらした。
米国のオバマ大統領の演説を分析した「聞き手を熱狂させる! 戦略的話術」の共著がある、「オフィス ブレスユー」社長の田中千尋さんに話をきくと、8月31日の菅・小沢会見について「2人とも、内側にこもった自分視点でしか話していない」と評した。一方、オバマ大統領は、聞き手がどう自分の言葉を受け取るか、に配慮する聴衆視点があるという。
「31日の演説に限っていえば、2人の話を聞いても、聞き手は『この人は私たちに向かって話しているのだ』とは感じることはできません。自問自答している印象でした」
9月1日付読売新聞朝刊でも、「政治家の言葉を研究する」東照二・立命館大教授(社会言語学)がこう指摘している。
「代表選を巡る菅、小沢両氏のこれまでの発言からは、なぜ出馬するのか、この国をどうしたいのかが伝わってこない」
「31日の会見でも(略)経緯の説明に終始していた。国民生活よりも、政局に目が行っている証拠だ」