猛暑だった2000年の場合、消費はほとんど伸びず
このほか、小林製薬の「熱さまシート」が前年の2.7倍に。近年は横ばいだったライオンの下痢止め剤「ストッパ」も7月に2割も増え、「冷たいものの食べすぎでは」。電子レンジ関連の調理器具、専用インスタント食品も「火を使わないで料理できる」というわけで好調だ。
意外なのが暖かモノ人気。コンビニ各社は早くもおでんの販売を始めているが、オフィス街などで、OLらが買うのが目立つといい、「冷房の効きすぎで冷えた体をあっためる」という。同様に、ユニクロのヒートテック(発熱保温肌着)、西友の女性用ハラマキパンツなども好調な滑り出しという。
反対に困っているものもある。農林水産省の「野菜の価格調査」(8月中旬)によると、暑さに弱い高原野菜のレタスが前年比23%高、キャベツが16%高、さらにトマトも14%高など。暑さに強いスイカは豊作で出荷は増えているのに値段は42%も高いといい、「猛暑で消費が伸びているから」(青果業者)。家畜の夏バテで豚肉や牛乳の生産も落ちている。
暑さで不漁、高値なのがサンマ。店頭で例年は1匹100~200円という庶民の味方だが、今は1000円以上のものも。通常、北海道・東北の沿岸で獲れるが、今年は水面温度が高いために、東方1000キロ以上の北太平洋にサンマが逃げてしまい、漁獲量は例年の1、2割にとどまるという。
第一生命経済研究所の試算では、東京と大阪の平均気温が平年より1度上がると、7~9月の個人消費を4333億円、国内総生産(GDP)成長率を0.3%程度押し上げる効果があると試算する。
ただ、同じように暑かった2000年は、8月下旬時点では同じような経済研究所が「7~9月のGDPを0.5%押し上げる」と試算していたが、3カ月後の12月に発表されたGDP統計は、消費がほとんど伸び率ゼロ、GDP全体も0.2%増の低成長にとどまった。暑いときは「景気いいぞ」と囃すのは毎度のことだが、今年は所得が伸びているわけでもなく、秋には反動で支出を減らし、消費が落ち込む可能性がささやかれる。ここにきての超円高などの不安要因も加わり、本当に成長率が高くなるかは、予断を許さない。