企業の労務管理や社会保険に関する業務を行うための国家資格「社会保険労務士」(社労士)の試験のずさんさが波紋を広げている。選択肢から正解を選ぶ「択一式」で、「記述に疑義がある」「すべての選択肢が誤りなので『解なし』」「複数回答がある」といった指摘が続出しているのだ。
これを受けて、試験の主催団体は、4問について出題ミスがあったことを発表した。同試験で、合格発表前に出題ミスを発表するのは異例だ。
60問のうち、3~7問について疑義が出る
社労士試験は毎年8月下旬に行われ、毎年5万人程度が受験する。試験はマークシート方式で、文章中の空白に入れる語句を選択肢から選ぶ「選択式」と、5つの選択肢の中から正しいものをひとつ選ぶ「択一式」を受験する。合格率は7~8%と低く、難関ともいえる。
10年度の試験は2010年8月22日に行われたばかりだが、この択一試験に対する不備を指摘する声が続出。資格予備校各社が配布する解答速報では、60問ある問題のうち、3~7問について「複数回答がある」「解なし」「正しい記述としては疑義が残る」といった指摘が出た。例えば、保険給付について誤った記述がある選択肢を選ばせる問題については、
「(選択肢の)A・B・D・Eは出題の根拠となる条文や通達が明確であり、Cについても明らかな誤りの点は見当たらず、『解なし』とした。ただし、Cは、問題文が粗い作りであり、A・B・D・Eのような明確な根拠があるわけではないので、Cが正解とされる可能性がある」(TACの解答速報)
と、酷評されている。
出題ミスの事実を認めて陳謝
試験を実施している「全国社会保険労務士会連合会 試験センター」が09年度の試験で発表した解答では「解なし」とされたのが1か所だけだということを考えると、間違いの「急増ぶり」がうかがえる。それ以外も、10年の試験では、「試験問題訂正票」として、試験を行う際に問題文の誤記を3か所訂正している。
これを受けて、同センターでは、8月27日夕方、出題ミスの事実を認めて陳謝。2問が「正答なし」で、2問については正答が2つあるとした。「正答なし」について全員を正解とし、「正答2つ」は、正答だとされた2つの選択肢について正解だとして採点する。
なお、前出の解答速報で指摘された問題についても、
「誤った選択肢について択一すべきところ、本来正答とされるべき選択肢(D)が正しい内容のものであったため、正答なしとなった」
とあり、予備校側の主張が正しかったことが裏付けられた形だ。解答が正式に発表されるのは合格発表の11月5日だが、その前の段階で出題ミスを認めるのは異例だ。センターの発表文では、
「受験者の方々にご迷惑をお掛けしたことを深くお詫びするとともに、今後、厚生労働省、試験委員及び全国社会保険労務士会連合会において対策を検討し、再発防止に努めて参ります」
などと陳謝している。