野田議員が体外受精で妊娠 問われる「母親とは誰か」

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   不妊治療体験をつづった著書もある自民党の野田聖子衆院議員(49)が、体外受精で妊娠に成功したことを週刊誌の手記で明らかにした。代理出産のあり方については日本国内でもしばしば議論になるが、今回の妊娠で注目すべきなのが、事実婚の関係にある男性の精子と、第3者の卵子からできた受精卵を野田氏の子宮に移したという点。これまでには、米国で代理出産で生まれた子どもが日本の法律では実子と認められなかったケースがある一方、今回のケースでは、法律上は野田氏が、子どもの「母」になる。代理出産に関する法整備が現実の社会に追いついていないのが現状だ。

対外受精の治療や流産の経験

   野田氏は01年に鶴保庸介参院議員と事実婚したが子どもに恵まれず、体外受精などの治療を続けた。04年には念願の妊娠を果たしたが、流産。その時の体験をつづった著書「私は、産みたい」(新潮社)を発表したが、45歳になったのを機に「子どもはあきらめた」などと発言していた。06年には、鶴保議員との事実婚も解消していた。

   そんな中、野田議員は「週刊新潮」10年9月2日号(首都圏では8月26日発売)に寄せた「それでも私は産みたい」と題した手記の中で、10年5月に米国で体外受精を行って妊娠し、現在15週目に入っていることを公表した。11年2月中旬に出産の見通しだという。

   日本国内でしばしば議論になる「代理出産」のケースと異なり、今回のケースでは、現在事実婚の関係にある飲食店経営者の精子と、米国の第三者から提供された卵子との受精卵を野田氏の子宮に移し、野田氏自身が出産することになる。野田氏は手記の中で、事実婚の「夫」が子どもを欲しがっていたことなどから、

「彼(事実婚の夫)のDNAが受け継がれるだけでも、それに一旦は、赤の他人を養子にしようと考えていたことからすれば、充分ではないか」
「私が子宮内の胎児に栄養を送り育てるなら、立派な『私の子ども』ではないか」 などと決断に至った理由を明かしている。

「提供者と分娩者、それぞれ母親を選択できれば」

   ここで問題になるのは「母親は誰か」という点だ。実は、この点については、民法で明示的に定められている訳ではなく、判例で「出産した人が母親」だとされている。有名な判例のひとつが、タレントの向井亜紀さんとプロレスラーの高田延彦さん夫妻の間に、米国で代理母から生まれた双子をめぐるケースだ。最高裁は07年3月「女性が出産していなければ卵子を提供した場合でも法的な母子関係は認められない」との判断を示し、双子の出生届けを受理するように求めていた夫妻の訴えが退けられている。

   この決定が根拠のひとつとしているのが、1962年の最高裁判決だ。この訴訟は、妻以外の女性が出産した子どもを、別の夫婦の子として出生届が提出されていたことに対して、母子関係の確認を要求していたものだ。判決では、母子関係は

「原則として、母の認知を待たず、分娩の事実により当然に発生する」

としている。この判決以降、事実上「分娩者=母」だとの見解が定着している。

   もっとも、07年の最高裁決定では

「立法による速やかな対応が強く望まれる」

とクギをさしているし、野田議員は、このような現状に対して、手記の中で

「今の時代、提供者でも分娩者でもお互いの合意を経て、どちらの立場でも母親になることを選択できるべきだと私は思います」
「これだけ卵子提供や代理出産の技術が進歩して価値観も多様化し、多くの女性が不妊治療を受けている現実に、法律が追いついていないんです」

と訴えてもいる。

   今回の野田議員のケースが、法整備の遅れを改めて浮き彫りにした形だ。

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