「提供者と分娩者、それぞれ母親を選択できれば」
ここで問題になるのは「母親は誰か」という点だ。実は、この点については、民法で明示的に定められている訳ではなく、判例で「出産した人が母親」だとされている。有名な判例のひとつが、タレントの向井亜紀さんとプロレスラーの高田延彦さん夫妻の間に、米国で代理母から生まれた双子をめぐるケースだ。最高裁は07年3月「女性が出産していなければ卵子を提供した場合でも法的な母子関係は認められない」との判断を示し、双子の出生届けを受理するように求めていた夫妻の訴えが退けられている。
この決定が根拠のひとつとしているのが、1962年の最高裁判決だ。この訴訟は、妻以外の女性が出産した子どもを、別の夫婦の子として出生届が提出されていたことに対して、母子関係の確認を要求していたものだ。判決では、母子関係は
「原則として、母の認知を待たず、分娩の事実により当然に発生する」
としている。この判決以降、事実上「分娩者=母」だとの見解が定着している。
もっとも、07年の最高裁決定では
「立法による速やかな対応が強く望まれる」
とクギをさしているし、野田議員は、このような現状に対して、手記の中で
「今の時代、提供者でも分娩者でもお互いの合意を経て、どちらの立場でも母親になることを選択できるべきだと私は思います」
「これだけ卵子提供や代理出産の技術が進歩して価値観も多様化し、多くの女性が不妊治療を受けている現実に、法律が追いついていないんです」
と訴えてもいる。
今回の野田議員のケースが、法整備の遅れを改めて浮き彫りにした形だ。