京都が生んだ伝説のスポーツカー「トミーカイラZZ」が、京大発のベンチャーの手で電気自動車(EV)として復活することになった。
地球温暖化防止の京都議定書を生んだ京都は、知る人ぞ知る「スポーツカーの聖地」でもある。関係者は「環境に配慮した次世代のスポーツカーを京都から提案したい」と意気込んでいる。
ポルシェに似たスタイルと高性能が人気
トミーカイラZZは「オリジナル設計によるハンドメイドの市販スポーツカー」として、1996年から京都の「トミタ夢工場」が200台以上を生産した。ポルシェに似たスタイルと高性能がマニアの間で人気を呼んだが、同社は2003年に経営破綻。後継モデルとして「トミーカイラZZⅡ」も開発中だったが、「幻のスポーツカー」となった。ZZⅡはゲームソフトなどにも登場するなど、ファンの間でZZの復活が待たれていた。
今回、トミーカイラZZをEVで復活させるのは、京大発のベンチャー「グリーンロードモータース」(本社・京都市左京区)だ。同社は2010年4月、京大の松重和美教授を中心に「EVの開発、販売」を目指して設立。環境対応自動車の早期普及を目的に、複数の提携企業と協力し、「京都電気自動車プロジェクト」を進めている。同プロジェクトは「大学の先端技術と京都の伝統文化、技術を融合してEVを開発する」というものだ。その具体的な作品が今回のZZというわけだ。
同社によると、新たなZZは「EVに適した軽量設計による新開発のシャーシを採用し、安全性、耐久性、ドライバーの快適性を飛躍的に向上させている」という。開発の総括責任者には、トミーカイラの創始者である冨田義一氏(元トミタ夢工場社長)が参画。
試作車は11月に発表する予定
試作車は11月に発表する予定で、「量産販売も検討する」という。今回はプロトタイプの鮮やかなボティーが公開された。
EVのスポーツカーは米国のベンチャー、「テスラ・モーターズ」が市販で先行しており、トヨタ自動車がEV開発で資本・業務提携した。テスラは高性能スポーツカー「テスラロードスター」の日本への輸出を開始し、年内には東京に直営店を新設する予定という。
しかし、テスラは量産セダンの開発費がかさみ、2010年4~6月期は最終赤字になるなど、EVの量産と普及には資金面の課題が多い。テスラがトヨタと資本提携した狙いも経営の安定にある。
京都の「グリーンロードモータース」の社名は「緑に覆われた道を颯爽(さっそう)と走るクルマ」をイメージしているという。京都には京セラ、日本電産、村田製作所など日本を代表する有力な電子部品メーカーが集積しており、EVの研究開発の素地がある。
合わせて京都は、スポーツカー開発の聖地でもある。日本を代表するレーシングカーの名門コンストラクター(製造会社)「童夢」は京都で生まれ、同じく京都の衣料品メーカー「ワコール」と組み、スバルの水平対向エンジンを使ったスーパースポーツカーを開発するなど、自動車開発の文化と歴史がある。今回のトミーカイラZZの復活は、大手自動車メーカーにはない京都の技術と文化の潜在力を内外に示すに違いない。