首相官邸からの「圧力」があった?
記者が質問したことに正面から答えなかったり、返答が曖昧だったりした場合、その場で追加質問が飛び出すのは、記者会見の場では一般的なことだ。さらに、この質問をした記者が8月14日の長崎新聞のコラム「記者ノート2010」で記したところによると、予定されていた2問目の質問に対する返答が終わった時点で「残り時間はまだ4分以上あった」という。
にもかかわらず、このやり取りをめぐって、長崎市は8月11日、「被爆65周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典後の内閣総理大臣記者会見等における取材方法について(要請)」と題した文書を、長崎新聞社と市政記者クラブに出した。内容は、
「信頼関係を失墜させる行為であり、誠に遺憾」
「円滑な運営・進行の妨げとなるような行為は一切行わないよう強く要請します」
などと、事実上の抗議文で、記者会見の進行について自治体がこのような文書を出すのは異例だ。
長崎市の広報広聴課では、文書を出した経緯について、
「事前に『取材要領』を配布して、(地元)記者クラブからの質問は1問だと明記していた。にもかわらず、会見の進行が滞ったことを受けての措置」
と説明。文書は、あくまでも市の判断で出したとの立場だ。だが、同課によると、会見が行われた8月9日、首相官邸から長崎市に対して
「(地元からの)質問は1問だということは、きちんと話が通っているのか」
という趣旨の確認の電話があったという。これに対して、長崎市は
「文書を出して周知徹底する」
などと回答。その結果出されたのが、前出の文書だ。一連の経緯を、「官邸の無言の圧力」ととらえるか「長崎市の過剰反応」ととらえるかどうかは、見方が分かれそうだ。ただ、過去数回の首相会見は、予定の時間を数分間残して打ち切られている。今回の出来事で、官邸側が記者会見での対応に神経質になっていることが浮き彫りになったとは言えそうだ。
なお、長崎新聞社の森永玲報道部長は
「そもそも、そんなことを言われる筋合いはないので、特に反応はしていません。事前に規定された以外の質問が出たぐらいで、このような反応があったことに、逆に驚いています」
と、文書を事実上無視する構えだ。