自動車保険の保険料値上げが相次いでいる。業界首位の東京海上日動火災保険が2010年7月から保険料を実質1%引き上げたほか、三井住友海上火災保険も10月の新商品発売にあわせて1%の値上げを実施する。上位2社に追従する格好で、日本興亜損害保険、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の3社も年内に1~2%保険料を引き上げることを明らかにした。
損害保険ジャパンも来春をめどに保険料を引き上げる方向で検討している。損保各社の保険料値上げは、2009年7月に損害保険料率算出機構が「参考純率」を5.7%引き上げたことを根拠にしている。参考純率とは、損害保険各社が保険料率を算出する際に基準とするもの。ただ、この参考純率をめぐっては多くの疑問が残されている。
「損保各社の要請によって見直しに着手した」
損害保険料率算出機構は、保険会社などから提供されたデータを元に各社の保険料の目安となる参考値を「損害保険料率算出団体に関する法律」に則り算出している。同機構には現在39社の保険会社が会員として加盟しており、2009年度は約36億3千万円の会費・入会金収入を計上。理事には損保大手各社の社長が名を連ねている。
適正な参考純率の算出は、保険会社の収支バランスを保つ上でなくてはならない業務だ。ひいてはこれが契約者利益の確保につながるといえる。ただ、問題なのは同機構が「損保各社の要請によって参考純率の見直しに着手した」(同機構職員)ことや「提示した参考純率を損保各社が文字通り『参考にしたか』までは把握していない」(同)など、会員会社主導の体質になっていることだ。
説明不十分のまま毎年のように保険料上がる
同機構役員は、参考純率の引き上げに際し
「保険は相互扶助の精神で成り立っている商品だということを消費者にもっと理解してほしい」
と話した。確かに、保険商品の原理からすれば同機構や損保各社の言い分は正論だ。しかし、この「保険の原理」を消費者に伝える保険業界側の取り組みは現状で十分だろうか。説明不十分のまま毎年のように保険料が上がるばかりでは、契約者の不満は増す一方に見える。
国内の損保業界は、この春から東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、NKSJホールディングスの3メガ損保体制がスタートした。国内シェアは3社合計で実に95%を占める寡占状態となっている。三井住友海上火災の江頭敏明社長(当時、現・MS&AD社長)は、経営統合発表当時、「統合効果を早期に発揮できれば、将来的に保険料の値下げも可能になる」との見方を示していただけに、今後の3社の料率改定が注目される。