「料金据え置き」タクシー会社 「行政指導」で「値上げ」に反発

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   名古屋を拠点に営業するタクシー会社、名古屋エムケイ(名古屋MK、本社・名古屋市北区)が、2010年度の運賃認可をめぐり5%程度の値上げを求める国の通達を不服として、現行運賃での認可を求める行政訴訟を2010年7月末、名古屋地裁に起こした。

   同社は同様の訴訟を福岡などでも起こしている。2009年10月に業界の過当競争防止を目的とする「タクシー適正化・活性化法」が施行されたが、民間企業が決めた運賃の「値上げ」を求める行政指導は異例で、訴訟の行方が注目される。

国の査定の不当性を訴える

   同社の現行運賃は、中型車の初乗り(1.3㌔)が400円、走行197㍍ごとに50円が加算される仕組みで、競合他社より初乗りで100円程度安い。同社は2010年1月、10年度の運賃を2009年度と同額に据え置く申請を中部運輸局に提出した。

   同運輸局が7月末に名古屋MKに通知した査定結果は、初乗り運賃を430円、その後の加算額は188メートルごとに50円とするよう求める内容だった。運賃計算の根拠となるタクシー車両の実働率をMKは高く設定しており、09年度までの5年間の平均実働率を基準にすれば赤字経営は避けられないという理由だ。

   これに対して、MKグループの青木信明社長は記者会見で国の査定の不当性を訴えた。主な主張は、①売上高では過去の実績と2010年3月時点の社員数を基準にした推計値を使っているのに、人件費は将来の予定増員分などを含めて計算している②昨年上半期に積極採用で社員数が倍増し収支を一時的に圧迫したが、未経験者が半年以上経過し、仕事に慣れると売り上げが向上する傾向にあり、事実、09年12月以降は単月黒字化している実情が無視されている――などだ。

法改正で規制を再強化

   中部運輸局は、行政指導に沿った運賃申請を8月10日までに再提出するよう求めていた。それまでにMK側が再提出しない場合、MKが名古屋地区でのタクシー営業をできなくなる見通しだったが、同社による提訴を受けて申請期限を1カ月間先送りした。司法の判断を見守る必要があるとの理由からだ。MKと国の間で同様の訴訟が起きている福岡では、同社が求めた運賃認可の仮処分の申し立てを受けて、福岡地裁が主張を認める仮処分決定を出し、営業は継続されているが、名古屋での訴訟の行方はまだ流動的だ。

   タクシー業界では、1990年前後の規制緩和による大都市での台数急増で運転手の労働条件が悪化し、社会問題化した経緯がある。09年の法改正はその反省に立って規制を再強化したものだ。しかし、企業の経費節減が進む中、「居酒屋タクシー」に象徴される個人タクシー事業者などのサービス競争は水面下で進んでおり、MKグループが全国で進める低運賃サービスが利用者の一定の支持を受けていることも事実で、司法の判断が注目されている。

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