世襲議員ではないことや、「サラリーマンの息子」を強調するなど「庶民派」のイメージを強く押し出している菅直人首相に、「夜のホテル通い」が目立ち始めている。
菅首相はかつて、麻生太郎元首相の連日のホテル通いを「感覚そのものが問われている」と批判した。かつての発言との整合性が問われることになりそうだ。
ホテルのバーが多かった麻生元首相を批判
参院選に敗北した翌日の2010年7月12日から、8月10日に軽井沢での夏休みに入るまでの約1か月間の動静を見ると、首相公邸以外で夕食をとったのは16回で、そのうち1回は、国際サッカー連盟(FIFA)視察団の訪日にともなって菅首相が官邸で主催した夕食会。「外食率」は、およそ50%といったところだ。
市民運動家出身の菅首相を「庶民派」と受け止める向きも多く、菅首相も、6月8日の首相就任会見で
「多くの民主党に集ってきた皆さんは、私も普通のサラリーマンの息子でありますけれども、多くはサラリーマンやあるいは自営業者の息子。そうした普通の家庭に育った若者が志を持ち、努力をし、そうすれば政治の世界でもしっかりと活躍できる」
と、アピールしている。さらに過去には、菅首相は「庶民感覚とかけ離れている」との批判を浴びた政治家を批判もしている。
08年には、麻生太郎首相(当時)が、毎日のようにホテルのバーやレストランで過ごしていることについて「庶民感覚からかけ離れている」などと批判を受けた。これに対して、麻生氏は
「ホテルのバーってのは安全で安いところだという認識がある」
と反論したが、当時民主党の代表代行だった菅氏は、08年10月24日には、
「『一流ホテルのバーが安い』という感覚そのものが問われている」
と、改めて批判を展開。
「『安いところで酒を飲む』と言うと、われわれの感覚では焼き鳥屋だ」
とも主張している。
焼鳥屋には行っていない
だが、自分が主催した夕食会を除いた外食15回のうち、焼鳥屋に出向いた形跡はなく、比較的リーズナブルな店としては、東京・東銀座のすし店「樹太老」(平均予算: 4500円)ぐらいだ。それ以外は、大半が高級ホテル内のレストランで、平均予算は2万円以上の店が多い。中でも昼食を含めると、千代田区紀尾井町のホテルニューオータニには、7回も足を運んでいる。同ホテルは、首相就任から公邸に引っ越すまでの約2週間、首相が「仮住まい」していた場所で、中華料理の「タイカンエン」や、ミシュランで星を獲得したこともある「なだ万」などの高級レストランが入居している。特に「なだ万」は、昼食と夕食の計2回、足を運んでいる。
批判を浴びた麻生元首相のホテル通いは、政財界の要人と密かに会うためだという側面が強かった。だが、菅首相が会食している相手は、「身内」が目立つ。例えば、福山哲郎官房副長官と「側近」として知られる寺田学首相補佐官は、それぞれ3回ずつ「動静」に登場。伸子夫人は、それを上回る4回だ。自らのかつての発言と矛盾する形での高級レストラン通い。批判を受ける可能性もありそうだ。